2007 Office Systemの最大の変革点の1つが「リボン」と呼ばれる新しいUIの採用だ。これまでとは全く異なる、新しい概念に基づくUIの採用は、2007 Office System全体の象徴ともいえる一大変更点といえるだろう。

これまでのOffice製品のUIは、画面上部のメニューバーとツールバーからなっており、Word 1.0のころから通して基本的なUIの設計は変わっていなかった。

このUI自体はWindows OSのアプリケーションの中では一般的なもので、[ファイル]メニューや[編集]メニューをクリックしてそれぞれの機能を選んでいくという仕組み。ツールバーには、メニューバーの機能により手軽にアクセスできるようにアイコンを配置して使いやすくしたものだ。

Word 1.0というと1989年に登場したアプリケーションだから、20年近く使われてきた伝統的なインタフェースだ。多くのユーザーがこのUIに慣れているのにも関わらず、マイクロソフトがこのUIを捨て、新しいUIを採用したのには理由がある。

WordをはじめとするOffice製品は、機能がどんどん増え、その肥大化が指摘されてきた。それにともなってメニューバーの項目は増え、ツールバーはどんどん多段化してきた。そうして増えた機能は、どこにあるのかなかなか分からず、見つけたとしてもメニューバーから項目を順次たどって......と長い手順が必要になってしまった。

これまでも、既存のメニューバーとツールバーを生かした工夫が加えられてきており、一時期はヘルパーアプリケーションがアドバイスをする仕組みを提供したこともあったが、Office 2000のころからはツールバーにはよく使う機能だけを表示し、さらにメニューバーもよく使う項目以外は、最初は隠れていてしばらく待つと表示されるといった仕組みを導入。さらに、特定の機能を実行するとツールバーが別途表示されたり、作業ウィンドウという形で別ウィンドウを表示したりといった工夫が加えられていった。

こうしてアプリケーション自体は複雑化していくものの、インタフェースの改良を進め、煩雑化する手順を何とか簡略化しようと試みられてきた。ところが、そうした工夫も機能の肥大化には追いついていけなかった。

実際に、Office製品を使っていて、そのすべての機能を使いこなせている人はあまりいないだろう。これまでも、「単に機能を実行するだけなのに、複雑な手順を踏まなければいけなくなっていて、機能自体を探すのがおっくう」「せっかく多機能なのに、使わない機能が多すぎる」などといわれてきた。

Officeは、機能を順次拡大していくにつれ、どんどん使いにくくなるという悪循環に陥っていた。それを解消するための工夫を続けてきたのだが、逆に今までの操作方法が使えなくなるという弊害を避けるため、メニューバーとツールバー自体を廃止することもできずにいて、結局少しずつ改良を加えていくしかなかったわけだ。

この問題を一気に解消すべく、2007 Office Systemでは、20年近く使われてきたメニューバーとツールバーを廃止するという大きな転換点を迎えた。これが大英断と呼ばれるか、大失敗と呼ばれるかは、まだしばらくは評価を待たなければならないだろうが、大きな決断であったことは間違いない。