「特別招待作品」から他に3本ピックアップしよう。1本目はチリが生んだカルトヒーロー、アレハンドロ・ホドロフスキーの監督作『エンドレス・ポエトリー』。2014年公開の『リアリティのダンス』で23年振りに一線に復帰したホドロフスキーだが、本作はその『リアリティのダンス』の続編にあたる。初めての恋や友情、父との軋轢など自身の青年期を虚実入り交じったマジック・リアリズムの手法で描く。撮影監督はウォン・カーウァイなどで知られるクリストファー・ドイル。観れば一発で判る独特なカメラワークにも注目だ。
2本目は今年のヴェネチア映画祭で最高賞となる金獅子賞に輝いたギレルモ・デル・トロの監督作『シェイプ・オブ・ウォーター』を紹介しよう。舞台は冷戦時代、政府の研究施設で働く発話障害の女性清掃員が、水槽で飼われている魚人を発見したところから物語は始まる。『パシフィック・リム』など、このところ駄作連発で明らかに精彩を欠いていたデル・トロの起死回生となる作品と評価して差し支えないだろう。アカデミー賞3部門受賞の『パンズ・ラビリンス』を、奇跡とまぐれに祝福された一本とはもう言わせない。
3本目は、リュック・ベッソン監督の作品『グラン・ブルー』のモチーフともなった伝説の素潜りダイバー、ジャック・マイヨールの波乱の人生を追ったドキュメンタリー『ドルフィン・マン』だ。本作のナレーションは『グラン・ブルー』の主人公を演じたジャン=マルク・バールが担当する。監督はレフトリス・ハリートス。本編終了後、VR作品『ドルフィン・マンVR - DIVE』の上映が予定されており、VRゴーグルを装着して、素潜りによる水深100mの世界を疑似体験できる。