販売開始時期にもAmazon.comの巧妙な意図が
もう1つ気になったのが端末の販売開始時期だ。今回7月25日より米国での販売が開始されるが、以前のKindleがそうであるように、同社はホリデーシーズン商戦よりやや早いタイミングの9~10月ごろを狙って端末を投入することが多かった。だが今回、それより2~3カ月ほど前、より具体的にはちょうど四半期分前倒ししてきたわけだ。 これは筆者の邪推だが、今回直接のライバルとなる「iPhone新製品」との競合を避けたかったというのが狙いではないかと考える。現在のiPhoneは9月に新製品が発表され、9~10月にかけて世界の各市場で販売がスタートする。
そのため、米国を含む世界でのiPhone販売台数が10~12月期の第4四半期が最も高くなり(Appleの会計年度では"第1四半期")、その後四半期ごとに販売台数が減少していった後、第4四半期で再び販売台数が大きく伸びるサイクルを繰り返している。
つまり従来のホリデーシーズン商戦を狙った第4四半期にFire Phoneを投入すると、完全にiPhoneに販売機会を食われてしまう危険性がある。一方で4~6月期の第2四半期にはもう1つのライバルであるSamsungのGalaxy Sシリーズの最新機種が投入されているわけで、7月25日をコアとする"第3四半期"というシーズンはどのライバルとも食い合わず、さらに「(新製品発表を前に) iPhoneが一番売れなくなる時期」を狙えるメリットがある。
携帯キャリア的にも穴となる時期に話題の新商材がラインナップされるわけで、渡りに船という感じだったのかもしれない。今回、AT&Tでの独占販売にあたってAmazon.comと同社でどのような条件が交わされたのかは不明だが、少なくとも次期iPhoneが販売開始される時期まではこの独占契約が続くとみている。