顧客のPrime誘導の意図を隠さない

今回のもう1つのポイントとして、「Amazon Prime」へのユーザー誘導がやや露骨に見えている点が挙げられる。例えば199ドルで端末を購入する場合の条件はAT&Tとの2年契約となるが、このときに付与される「Amazon Prime」の利用権は1年間であり、端末で利用できるコンテンツ配信サービスを存分に享受するにはPrimeの追加契約が必須となる。

Amazon Primeはストリーミング映画や音楽などにアクセスできるサービス

Amazon.com的には「端末購入で1年間99ドルのPrime契約が付いてくるのだからお得」としているが、結果的にユーザーはPrimeサービスを利用するためにAT&Tの通信料とは別にAmazon.comへの支払いも行わなければいけない。既存のPrimeユーザーであれば別として、実質的にAmazon.comのサービスを利用するための追加料金を支払っているようなものだ。

以前にも「Amazonインスタント・ビデオ」の日本上陸で紹介したように、日本でいうところのAmazon Primeと米国のAmazon Primeの位置付けは異なる。日本では単なる配送優遇サービスだが、米国ではそれに加えてPrimeユーザー向けの"無料"コンテンツがいくつもラインナップされており、これをオンラインストリーミングで楽しむのがPrimeのメリットとなっている。現在、PrimeはAmazon.comの貴重な収入源となっており、顧客をなるべくPrimeに誘導する施策を採ることが戦略上の重要なポイントとなっている。サービス拡販のための専用デバイス販売など、こうした露骨なPrime誘導がみられるのも、Amazon.comの現在のビジネス戦略が垣間見られて興味深い。