詳細なスペックや概要は速報ニュースを参照してほしいが、スペック表だけを見ればライバルと比べてもまったく遜色のないハイエンド端末だ。しかもDynamic Perspectiveのような新しいユーザーインターフェイスに加え、Fireflyのように簡単にデータベースや関連サービスの情報にたどりつけるユニークな機能を備える。
32GB版の本体価格はAT&Tとの2年契約で「199ドル」だが、契約なしバージョンの価格は「649ドル」と、ストレージ容量こそ異なるものの「iPhoneとまったく一緒の価格設定」だ。しかもキャリアとの契約プランは通常のAT&Tのものとなっており、割引特典などはない。Kindle Fireで見せたような「本体をとにかく低価格で販売して、利益はそこで利用できるコンテンツ販売で稼ぐ」という方策とは真逆となっている。つまり「ハイエンド端末でiPhoneらライバルとまったく同じ土俵で勝負する」道をAmazon.comは選択したわけだ。
Amazon.comが端末の低価格販売路線を捨てたわけ
過去のAmazon.comをみれば、オリジナルKindleがそうであったように「端末をなるべく安く、ネットワーク通信量は無料で、電子書籍の販売で稼ぐ」という「コンテンツ販売」が利益の源泉だった。「利幅を削っても売上増と市場拡大を優先する」というAmazon.comのビジネススタイルは、かつてパラノイアといわれたMicrosoftやIntelにも通ずるものがあり、将来的に驚異的な企業に成長する予感を内包させている。
オリジナルのKindleでは電子書籍の配信にかかる通信量をAmazon.com自身が負担していたから無料化が実現できたわけで、あくまでユーザーには徹底的にコンテンツ消費に集中してほしいというユーザー体験を重視したスタイルを採っている。Kindle Fireではさすがに通信料無料という"特典"はなくなったものの、本体価格はタブレットの競合製品であるiPadに比べれば破格の設定で、「安さとユーザー体験を武器にライバルを圧倒」というスタンスはそのままだと考える。
だが今回の「Fire Phone」の販売スタイルは、「Kindle Fireが失敗だった」ことをAmazon.comが認めた結果だったと筆者は推測している。