同製品の正式発表前、Amazon.comがスマートフォン向けサービスを提供する際にAT&TのSponsored Dataと呼ばれる仕組みを使って「特定のコンテンツ配信にスポンサーをつけることでユーザーが無料で携帯通信が行えるサービス」を検討しているという噂があった。
蓋を開けてみればAT&T独占販売という話以外は実現しなかったわけで、さまざまな理由が考えられるものの、少なくとも「通信料金の値引きでユーザーをコンテンツ消費に集中させる」という方法は選択されなかった。「端末を割引販売してユーザーの裾野を広げてもその多くはコンテンツ消費にお金を使わず、積極的なコンテンツ消費を行うユーザー層は限られている」ということを身をもってAmazon.comが理解した……というのが筆者の予想だ。
コンテンツ消費にお金を積極投入する、いわゆる「プレミアム」なユーザーというのは「ハイエンド端末」を購入するような層であり、ミッドレンジ以下の層に端末を積極的にばら撒いてもその利益上昇効果は薄い。「なら、どうすればハイエンド層により使ってもらえるような端末ができるのか?」と考えた結果がFire Phoneではないだろうか。
こうした層は端末の値段設定はさほど気にせず、「使いたい端末」であればお金にそれほど糸目をつけない。値段の基準はすでにiPhoneが作っており、これを上限に設定すれば投入可能なスペックの上限はだいたい見えてくる。
あとは差別化のための機能やユーザー体験の付与だ。Amazon.comが3D表示とハンドジェスチャーで操作可能なスマートフォンを開発しているという噂は1~2年ほど前から聞こえていたが、開発期間の多くはこのバランス調整に費やしていたのではないかと推察する。