米Amazon.comは6月18日(米国時間)、同本社のある米ワシントン州シアトルで開催されたプレスカンファレンスにおいて同社初のスマートフォン「Fire Phone」を発表した。既報にもあるとおり、クァッドコアCPUと4つのカメラセンサーを搭載して片手だけでさまざまな操作体験を実現できるDynamic Perspectiveや画面の3D表示など、非常にユニークな機能をハイスペックな筐体で実現している。一方で、筆者を含めて一部で予想していた「低価格・低料金プランでライバルを圧倒する」といった施策は見せず、完全に相手と同じハイエンド端末の土俵で「各種Amazonコンテンツを利用するのに適した端末」を実現しようとしている。なぜAmazon.comはKindle Fireにあったような「低価格路線」を捨てたのか、そのあたりの戦略を考察してみる。

Fire Phone

米国で飽和しつつあるハイエンドのスマートフォン市場の新星

すでにこれまでも何度も触れてきたが、米国のスマートフォン市場は特にハイエンドの市場で飽和に近付きつつある。すでに携帯普及率は契約数ベースで100%超、普及率では約9割ほどとなっている

新規顧客獲得が難しくなりつつあるなか、各キャリアは端末販売に奨励金を載せて割引販売するスタイルを改めつつあり、「料金改定による実質値上げ」「シェアプランなどの囲い込み策」といった形で「取れるところから取って利益率改善を行う」方法を模索している。この傾向は奨励金を盛る傾向があるハイエンド端末ほど顕著で、同時に低価格の端末を低料金で利用できるミッドレンジ以下の層をターゲットにしたサービスを「MVNO」や「別ブランド」で展開するなど、裾野を広げる戦略も採っている。