『Fate/Zero』の映像制作を支えるufotableの新進気鋭スタッフを7つのカテゴリーから紹介。今回は「撮影」のお二人に話を聞きました。

はじめまして、吉川冴さん・滝沢雅人さん

――まずは、自己紹介をお願いいたします
吉川:『Fate/Zero』で「撮影」を担当しています吉川冴(写真左)です。入社は2006年12月です。
滝沢:同じく『Fate/Zero』で「撮影」を担当しています滝沢雅人(写真右)です。入社は2010年6月です。

撮影:吉川冴さん・滝沢雅人さん

――お二人はufotableへはどの様なきっかけで入社されたのですか?
吉川:私はアニメの専門学校に通っていて、アニメを作る工程を一通り教えてもらっていたのですが、その中でも、ソフトに触れたり、最終的な画面を見たりするのが楽しかったので「スタジオで働く時は撮影がやりたい」と思っていました。そしてある日、学校の就職課でufotableの求人広告を見て、個人的に『フタコイ オルタナティブ』が好きだったので「これは!」と思いすぐに連絡しました。そしたらその電話に撮影監督の寺尾さんが出てくださって、後日会社見学に伺う事になったんですが、伺って早々に寺尾さんに「で、いつ入社するの?」と言われたんです(笑)。そしてその後、縁あって入社させていただく事になりました。

滝沢:僕は大学でCG制作などを勉強していたのですが、就活の時期に、CG制作をしている大学生たちの飲み会に参加する機会がありまして、そこで吉川さんと同じく寺尾さんとお会いしたんです。もともと寺尾さんの事はTwitterで知っていたんですが、直接お会いしたその時に、寺尾さんに、自分が今までどんなものを作ってきたかという映像を見てもらいまして、そこで寺尾さんに「今度よかったらufotableに遊びに来ない?」と言われて、そのままトントン拍子に話が進んで入社することになりました。なので、しばらくは大学に行きながらufotableに通っていましたね。

吉川:二人共、偶然、寺尾さんきっかけです(笑)。

「撮影」は画面の化粧をする仕事

――お二人がされている「撮影」という仕事は、具体的にどんな作業をされるのでしょうか?
滝沢:実は『Fate/Zero』では、僕と吉川さんの仕事はかなり違います。もちろん僕も撮影もするんですが、僕のメインは3DCG担当なんです。

吉川:では「撮影」に関しては私から説明しますね。まず、各部署を経て出来上がったキャラセル(キャラクターが描かれたもの)と背景セル(背景が描かれたもの)、時には3DCGの素材がデータで手元に届きます。余談ですが、今はセル画は使わないのですが、昔からのなじみでセルと呼ぶ事が多いですね。

そして、そのそれぞれをPCのAfter Effectsといった専用の映像編集ソフトに取り込みまして、そのシーンに合った光や空気感のエフェクト(効果)を1カットずつ付けていきます。例えば部屋の中のシーンだったら「部屋の天井にある光源に対して生まれる、室内の物の明暗や陰影」、アクションシーンだと「剣の煌めき」「キャラの動きに合わせた光の反射の変化」、あとは「剣と剣がぶつかる時に迫力を出すための画面揺らし」なども撮影で加えます。作画で描いた雪や雨のシーンに、デジタルで追加する事もありますね。

滝沢:『Fate/Zero』って他の作品に比べて、CGの割合がすごく大きいんです。作画と美術の工程だけでは再現できないようなものを作るためにCGを駆使している感じですね。

吉川:撮影は、最終的なより良い画面のためのお化粧の様な作業だと思います。女性に例えるなら、キャラと背景がその人本来のすっぴんの顔で、カットや話数毎に表現したいものの違いで、薄い化粧の場合もあれば濃い化粧の場合もある、みたいな感じでしょうか。

――ちなみに撮影作業って、1カットどれぐらいの時間かかるものなんでしょうか?
吉川:カット内容によってもまちまちでして、短いと数分で終わるカットもあるんですが、深夜にふと「今日は朝から丸一日中このカットだけ触ってるなぁ」という事もありますね。放送尺的には数秒のカットでも、ソフトウェアのレイヤー上では色んなものが重なっていてえらい事になってる、みたいな(笑)。ファーストシーズンだと、第4話でランサーの槍がセイバーの風王結界(インビジブル・エア)をガリガリっと削るカットは作業的にはかなり重かったですね。