ソニーブース~直下型LEDバックライトの4K2K対応液晶マスターモニターと業務用4K2K反射型液晶プロジェクタ

ソニーブースは、一般的な家電ショウではお目にかかれない珍しい業務用のディスプレイ製品を展示していた。

ブースを訪れてまずめに飛び込んでくるのは超大型のプロジェクタ「SRX-T420」。既にレポート済みのエレクトロニックシアター編で、映像の上映に「SRX-R220」が用いられたことは報告済みだが、ブースに展示されていたのはSRX-T420で、こちらは今年登場したデータプロジェクタの最新モデルだ。

ソニーブース

SXRD(Silicon X-tal Reflective Display)とはソニーが誇る反射型液晶パネルのこと。通常の液晶プロジェクタでは光の透過制御によって階調制御を行うが、反射型液晶パネルはパネルに入射光の反射光を制御して階調生成を行う。原理的に開口率に優れ、迷光を少なくすることができるため、コントラスト感に優れるという利点を持つ。反射型液晶パネルはLCOS(Liquid Crystal on Silicon)とも呼ばれ、日本メーカーでは他にビクターが量産化に成功している。

ハリウッド映画作品を初めとして、既に業務用の世界では4,096×2,160ドットの4K2Kコンテンツが台頭してきており、これを大画面投射するためのプロジェクタ製品には大きな期待が寄せられている。ソニーのSRXシリーズはまさにそうした要望に応えた業務用製品だ。

展示されていたSRX-T420は、データプロジェクタ製品で、4K2K解像度のSXRDパネルを採用し、2万1,000ルーメンもの超高輝度性能を誇るハイエンド製品。コントラスト性能は3,000:1。

ソニーのSRXシリーズはT型番がデータプロジェクター製品で、R型番がシネマ向け製品となるが、SRX-T420と同世代の(前述のエレクトロニックシアターに用いられたSRX-R220の後継となる)シネマ対応製品は「SRX-R320」になる。

この他、中小ホール向けの下位モデルとしてSRX-T110/T105もラインナップされる。

価格はSRX-T420が2,000万円、SRX-T110が1,750万円ほど。光源は数千キロワット出力のキセノンランプを使用するのでランニングコストは民生機と比べればベラボーに高い(SRX-T110向けの2kW光源ランプ「LKRX-B110」は70万円もする)。

2万1,000ルーメンの4K2Kパネル搭載のSXRDプロジェクタ「SRX-T420」

さて、ソニーブース、もう一つの目玉は、56インチサイズの業務用液晶マスターモニター「SRM-L560」だ。

こちらは厳密には4K2Kではなく3,840×2,160ドットパネル、すなわちフルHD(1,920×1,080ドット)4枚分のQFHD解像度の3,840×2,160ドットパネルを採用した製品になる。

バックライトはRGB-LEDの直下型レイアウトを採用。これを聞いてトリルミナスを思い出すな……という方が無理だが、SRM-L560ではトリルミナスのようなエリア駆動には対応していない。「直下型のRGB-LEDバックライトなのにエリア駆動未対応なのはなぜ?」と思うかも知れないが、これはSRM-L560がマスターモニター製品だからだ。

民生向けの視聴用ならば色と輝度のダイナミックレンジを大げさに広げてユーザーの満足感を煽ることは重要だが、マスターモニターではそうもいかない。マスターモニターは、その映像をマスタリングする用途に使うため、作為的な映像表示では不都合が出てくる。例えばエリア駆動をした場合、明部表現が多いエリアのバックライトは輝度が持ち上げられ、暗部表現が多いエリアのバックライトは輝度が下げられる。これは、データ上は同一輝度値の画素も、隣接した画素の輝度に引っ張られ表示時の輝度が変わってきてしまうと言う問題を生む。1フレーム内において輝度の一意性が保証されないとマスタリングは行えないのだ。

こうした「映像データを過不足なく表示する」というマスターモニターのコンセプトが大前提としてあるために、SRM-L560は、倍速駆動モードも搭載されていない。同様の理由で、倍速駆動による補間フレーム・エラーが発生した場合に、映像データ側にエラーがあるのか、ディスプレイ機器側(SRM-L560側)の倍速駆動側のエラーなのかが判別しづらくなるためだ。ただし、SRM-L560は120Hzのハイフレームレート表示には対応している。

ではなぜ、白色LEDではなく、RGB-LEDなのかと言えば、業務用マスタリングで使用する多様な色域モードに対応するため。SRM-L560ではハイビジョン用の標準色域となるITU-R BT709はもちろん、デジタルシネマ用途のD-Cine、S-GAMUTといった色域にも対応しており、これらの色域に正確に対応するにはRGBの出力バランスを的確に制御できるRGB-LEDが必要なのだ。なお、バックライト部にはRGBセンサーと色温度センサーを複数配置しており、RGB-LEDの経年劣化に対応した発光バランスを自動的にフィードバックできる仕組みを搭載している。この贅沢さは業務用ならではの高機能だといえる。

気になる接続端子だが、標準ではDVI-D端子×4、HDMI端子×4を装備しており、イメージ的には1,920×1,080ドットを4枚分それぞれの端子に入力してやる…という接続方法になる。Displayportならば1本の接続ケーブルで3,840×2,160ドットの映像入力ができるはずなのだが、SRM-L560では未対応だ。

SRM-L560は、2009年11月より発売が開始されており、価格は約650万前後が想定されている。

3,840×2,160ドットのドットバイドット表示のCGアニメーション。高精細解像度はCGで映える

RGB-LEDならではの豊かな発色

ハイビジョン用の標準色域となるITU-R BT709モードによる表示

SRN-L560 Naitiveカラーモードにすれば意図的に色ダイナミックレンジを広げることもできる