Parallels Desktop 4.0 for Mac(以下、Parallels Desktop 4.0)の紹介を始める前に、MacでMac OS X以外のOSを使う時の基礎知識を解説しておこう。BootCampと仮想化の違いを知れば、なぜParallels Desktop 4.0を選ぶユーザーが多いのか、その理由がわかるはずだ。
仮想化とBootCampの共通前提
OSのインストールが必要
BootCampにせよ仮想化にせよ、OSのインストールが必要だ。Windowsを使いたければWindowsの、Linuxを使いたければLinuxのインストールCD / DVD-ROM (正規ライセンスも当然必要) を用意しなければならない。当然、そのぶんのHDD空き領域も確保することになる。
BootCampは「Macそのもの」、仮想化ソフトは「架空のマシン」
BootCampでは、Mac ProやMacBookといった「Macのハードウェアそのもの」が作業対象となる。そのため、Macに搭載されたグラフィックチップに対応するドライバがないなどの理由で、Intel x86アーキテクチャ対応ではあってもMacでは (本来の性能で) 動作しないOSも存在する。HDDのパーティション形式の違いにより、Intel Macには直接インストールできないOSも珍しくない。仮想化ソフトの場合、そのようなハードウェアに近い部分は抽象化されるため、「Windowsが動く一般的なPC」として利用できる。
仮想化が有利な点
Mac OS Xのシステム上で他のOSが動作する
仮想化ソフトは、Mac OS X上で動作するアプリケーションだ。その上で別なOSを動作させるので、Mac OS Xと並行してWindowsやLinuxの機能を利用できる。BootCampでは、1度システムを再起動しなければならないことを考えると、こちらの方が効率的に作業できる。
パーティション設定が不要
仮想化ソフトでは、インストールしたOSが1台の「仮想マシン」を構成する。仮想マシンは、ディスクイメージファイルを仮想HDDとして使用するため、HDDに専用のパーティションを必要としない (使用も可)。ファイルなので、バックアップも簡単だ。
複数のOSを利用できる
BootCampでは、Mac OS Xの他に1つのOSをインストールすることしか想定していない。WindowsとLinuxとMac OS Xの「トリプルブート環境」を構築したいとか、Windows VistaとWindows 7の両方を利用したいといった要望に対し、BootCampの機能だけで応えることは難しいのだ。しかし、仮想化ソフトでインストールしたOS (仮想マシン) はディスクイメージファイルとしてMac OS X上に存在するため、HDDに余裕があるかぎり、いくつでもOSをインストールできる。
Mac OS Xの操作体系を崩さずに使える
仮想化ソフトによっては、ゲストOS上で動作するアプリケーションを違和感なく操作するための追加プログラムを提供している。Parallels Desktop 4.0を例にすると、「コヒーレンスモード」と呼ばれる機能を利用すれば、WindowsアプリをDockから起動したり、Windowsのタスクバーを非表示にしたりすることができる。[Command]+[tab]キーでタスクを切り替える時も、起動中のWindowsアプリが候補に表示されるなど、Mac OS XかWinかと意識する必要がないよう配慮されている。
アップグレード版のWindowsもインストールできる
BootCampでアップグレード版Windows XPをインストールしようとすると、正当なアップグレードの権利を持つユーザーかどうかの確認のため、旧バージョンのWindowsインストールCDに入れ替える作業が発生する。しかし、インストーラの仕様によりイジェクトキーが作動せずCDを取り出せないため、内蔵のCDドライブだけではアップグレードが困難だ。仮想化ソフトの場合、ソフトウェア的に内蔵CDドライブを無効化してイジェクトできるので、特に支障なくアップグレードできる(ただしラネクシーのサポート外の利用法となるため、万が一何らかのトラブルがあっても問い合わせなどは避けてほしい。あくまで自己責任で利用されたい)。
BootCampが有利な点
ハードウェア本来のパワーをフルに発揮できる
仮想化ソフトは、Mac OS Xのシステム上で動作する。仮想化ソフト上のOSを優先させる設定にすれば、著しい速度の低下は避けられるが、CPUが本来持つパワーすべてを利用できるわけではない。また、搭載メモリの一定割合はMac OS Xが占有し続けるため、使用可能なメモリ領域は限られてしまう。MacそのものにOSをインストールするBootCampであれば、ハードウェア本来のパワーをフルに発揮できる。