他人名義のタンス株券を持っていると紙切れになる?

繰り返しになりますが、名義書き換えを行わず、株券が他人名義のままの場合には、株主としての権利を喪失する可能性があります。信託銀行などの名簿管理人に問い合わせて、名義書き換えを早急に行う必要があります。

しかし得てしてこういう場合に限って、株券保有はもとより、株式投資にも全く縁も興味もない、というケースが多いもの。株券電子化のニュースも知らず、他人名義の株券を手元に置いたままという可能性も少なくありません。こうした人は、本当に株券が紙切れになってしまうのでしょうか?

電子化後は発行会社が株券保有者のデータを「特別口座」に移管

株券を持っているけれど、保有自体を忘れている等で名義の書き換えが終わっていない株主を2009年1月以降は「失念株主」と呼ぶことになっています。

名義の書き換えの有無に関わらず、「ほふり」に株券を預けずに、手元に持ったままでいる人は少なからずいると予想されます。

発行会社はそうした株主の権利も守るために、電子化実施後に、最後まで株券を持っている株主を調べ、信託銀行に「特別口座」と呼ばれる口座を新規に開設。「ほふり」を通じて、株主名と保有株式数を記録します。そのため、株券を手元にもっていても、配当の受け取りや株主総会での議決権などの権利は守られることになります。

ただし、特別口座に入った状態では、その株券を売却したり、贈与したりすることはできません。もし、売却などをする場合は、1度証券会社に口座を開いて、株券を移し、それから売却注文を出すことになります。

失念株主の名義書き換え救済策も用意

一方、先ほど紹介した名義が他人名義のまま、電子化を迎えた場合はどうなるのでしょう。その場合、救済措置は設けられており、一定の手続きをすれば、発行会社が名義株主の特別口座から失念株主の特別口座に振替をしてくれます。

手続きには以下の3種類が用意されています。

  1. 名義株主と失念株主が共同して請求する場合
  2. 失念株主が裁判所の判決等の省令で定められた書類を添付して、請求する場合
  3. 利害関係人の利益を害する恐れがない場合として、主務省令で定める場合。これは、失念株主が、株券電子化から1年以内に、株券(券面)と株券電子化前に取得したことを証明できる資料を提出して請求する場合などが予定されています。

現実的には(3)の手続きをするのが一般的になるでしょう。この場合は、株券と証券会社が保管している顧客勘定帳のコピーなどを用意、発行会社に名義書き換えを請求します。発行会社は本来の株主であると確認できたら、信託銀行に指示して、株主名簿に載った元の名義人から、本来の株主の名義の特別口座にデータを移します。

いずれにしても、電子化後の手続きは労力と時間を要します。なるべくなら、電子化前に手続きを済ますことが好ましいでしょう。⇒各証券会社の対応は?