3章で株券電子化の手続きについてご紹介しましたが、一般的なパターンにはまらないケースも多々あります。ここでは、そういったイレギュラーなケースを紹介しましょう。
株券をなくした場合は、まず信託銀行に連絡を
持っているはずの株券が見当たらず、証券会社を通して「ほふり」も利用していない人は、まず株主名簿管理人(信託銀行など)にまず連絡してみる必要があります。信託銀行もどこでもいいわけではなく、それぞれの発行会社の指定の銀行がありますので、わからなければまず発行会社に確認する必要があるでしょう。 そもそも、株券を失くしていても、株主総会招集通知や配当の支払い通知書などを受け取っていれば、名義人として株主名簿には登録されているはずです。念のため、信託銀行で確認。そこで株主名簿上の名義人が自分になっていれば一安心です。
ただ怖いのは、失くした株券を拾った人が「自分が株主だ」と名乗りでたり、市場で売却してしまう可能性も0ではないことです。こうした場合は、自分が株主の権利を失うことになりかねません。いずれにしても、早めに「株券失効」の手続きをとることが大事です。
株券失効制度で事故を未然に防ぐ
株券失効制度の手続きは、まず株主名簿管理人である信託銀行に「株主喪失登録」を依頼します。すると信託銀行側では、株券喪失登録簿への記載・記録請求をし、いったん一般閲覧の形をとります。それから喪失登録者が登録抹消の申請をする形で、株券は1年後に失効。株券が再発行されます。
これでみてわかるように、実際に紛失した株券が無効になるには1年かかってしまいます。ただ、その間に第三者が株主であると名乗り出たり、売却されたり、というリスクは回避することができます。
単元未満株保有の場合、基本、「特別口座」に移管される
自分の意思とは関係なく、単元未満株や端株を持っている人は多いのではないでしょうか。単元株はトヨタなら100株、資生堂なら1,000株が1単元とそれぞれの会社で定められています。単元を持っている者だけが、株主と定義され、議決権をはじめさまざまな株主の権利を享受できます。ところが、場合によっては、トヨタの株式を110株保有している人がいるケースがあります。これは、トヨタが株券を1対1.1に株式分割したために、10株分の単元未満株がしてしまったというわけ。
通常単元未満株は、株主名簿上に記載があるだけで、株券は発行されていません。こうした株式は「ほふり」に預託することができないため、2009年1月5日以降は、発行会社が開設する特別口座に記録して管理されることになります。また、一部非常に昔から保有している単元未満株に、株券の発行を伴ったものがあります。この場合は、単元株と同様に証券会社に口座を開けば、「ほふり」に預託することができます。
ちなみに、単元未満株は原則として市場で売却することができません。しかし、買増制度を利用すると、単元株式数に満たない株数分だけを購入することができます。しかしこれは、発行会社が買い増しを行うと定めている場合にのみです。逆に、単元未満株の売却は、どの銘柄でも可能です。売却方法は2種類。株式分割などで単元未満株を保有している登録株の場合、証券会社を通じて買取請求を株主名簿管理人(担当信託銀行)に依頼します。ほふりに登録されている場合は、証券会社に売却を依頼。証券会社はほふりに請求をします。「特別口座」移管後もこうした買増、買取の請求は今まで同様におこなうことができます。
端株の場合は電子化対象外に
JR東日本など単元株制度を採用していない会社は売買単位が1株になります。それが、株主分割などを行って、0.1株といった端数が生じた場合、端数分の株式を端株といいます。
1株未満の端数分は、通常発行会社が株主名簿と別に管理をしていますが、今回の株券電子化では対象外。取り扱いができなくなるため、端株採用会社は電子化実施前に端株をなくす対応をする必要があります。端株をなくす方法としては、(1)「端株の買取・買増請求の促進」や「定款変更による端株制度の廃止」、(2)「株式分割と単元株制度を同時に採用する方法」などが行うと想定されます。
いずれにしても、今、端株を保有している人に不利益が生じないよう手続きが行われるはずです。保有者は発行会社から個別に連絡があると思いますので、指示に従って手続きをしましょう。⇒うっかり手続きを失念した場合、2009年1月以降どうなる?