3気筒はバイク用として理想のエンジン
まとめよう。ストリートトリプルの魅力は、やはり熟成された3気筒エンジンにある。
4ストロークの3気筒エンジンは、120度クランクで爆発は240度周期となる。等間隔爆発ながら適度なパルスがある。スムーズさと豊かなトルク、高いトラクション性能を備えている。1050ccにも成長したエンジンで信号スタートで楽しむのも悪くないが、そのバランスの良さとコントロール性の高さを味わってほしい。
そして3気筒エンジンはワインディングの楽しさも支えている。前ページでは重心云々を中心にスピードトリプルのわかりやすさを述べたが、重心のせいではない可能性は高い。なんというか、もっと自然なのだ。アライメントやタイヤの特性で作り上げたものではなく、もっと根源的なところから来ているように感じる。4気筒よりも短いクランクも効いているのだろう。今の日本車では得られないフィーリングだ。
現在トライアンフは、2気筒のボンネビル系を除き、すべて3気筒となった。巨大なロケット系を他のメーカーが作るなら4気筒か6気筒にするだろう。それをあえて3気筒にしている。600ccのスーパースポーツ系も、4気筒から3気筒に切り替えた。トライアンフは3気筒についてなにか確信を得ているのに違いない。その理由は想像するしかないが、スピードトリプルに乗った後なら、なんとなく理解できる。チャンスがあれば、「トラの3発」をぜひ試してみてほしいと思う。
さてスピードトリプルだが、オトナのバイクにふさわしいかどうか、いまでも悩んでいる。人に尋ねられたら、あれこれピックアップしながら、結局はタイガーを薦めるように思う。
スピードトリプルに強いて名を付けるなら、「ちょいワルおやじのバイク」だろうか。スタイリッシュに乗るならユーティリティの低さもなんとかなる。ただし、それなりに乗りこなせることは必要だろう。"スーパースポーツはもう飽きた"というライダーには最適に違いない。
撮影:平 雅彦 (WINDY Co.)
レポート:西尾 淳 (WINDY Co.)