バリエーションは増えたが3気筒が中心
現在(2008年)、日本で販売されるトライアンフはエンジンによって4系統に分けられる。巨大な縦置き3気筒2,294ccエンジンを搭載するクルーザーの「ロケットIII」系。伝統的な並列2気筒(865cc)エンジンの「ボンネビル」系。軽快に回るスポーツ性の高い3気筒675ccエンジンの「デイトナ675」と「ストリートトリプル」。そして今回のテーマである「スピードトリプル」を含めた1,050ccの3気筒エンジン系列である。
21世紀に入ってからトライアンフはモジュラーコンセプトから脱却を進めており、現在はラインナップしていないが、600ccクラスの4気筒エンジンも製作された。並列2気筒、縦置き3気筒も、それ以降に設計された新しいエンジンである。逆に見れば、モジュラーコンセプトから生まれて時間をかけて熟成され、現在も販売されているのは「スピードトリプル」、「タイガー」、「スプリントST」の3モデルだけなのである。
今回試乗するにあたって、やはり「トライアンフの3気筒」に乗りたいと考えた。モジュラーのエンジンである。ずいぶん前だが、「デイトナ955i」に乗ったことがある。最初に借り受けて街で乗ったときは、"なんて乗りにくいバイクなんだ"と思った。しかしワインディングへ行くとぜんぜん違っていた。ものすごくいいバイクだった。その後「サンダーバード」にも乗った。ボンネビルができる前のクラシカルなスタイルのバイクだが、やはり3気筒で、これもすごくよかった。業界でも「トラの3発はいい」が定説になっていた。
現在のモジュラー3気筒はスピードトリプル、タイガー、スプリントSTの3モデル。このうちどれにしようか考えた。まずツーリングモデルのスプリントSTは目的がシンプルなので除外。スピードトリプルも楽しそうだが、「オトナのバイク」コンセプトに照らし合わせると、やはりタイガーだろうと考えた。
タイガーは、もともとオフロードも想定したデュアルパーパスモデル。しかし2007年にフルモデルチェンジを行ない、汎用性の高いロードスポーツモデルへと生まれ変わった。これで迷いがなくなったようで、ツーリングはもちろん、市街地走行、ワインディングも楽しく走行できるようになった。
トライアンフに電話を入れてこちらの考えを伝えると、「それだったらタイガーですね」と即答された。しかし残念ながらタイガーは長期貸し出しに出ていて車両がないという。困っていたら、「スピードトリプルもいいですよ」とのお言葉。これで決まった。スピードトリプルは14年も販売されているのに、いままで一度も乗ったことがなかった。やはりちゃんと乗ってみたかったのである。第一、「スピードトリプル」という名前がいいではないか。