さて、その肝心の中国国産アニメのレベルだが、年々向上していると言われながらも、日本との間にはいまだ大きな隔たりがあるように感じた。

まず、技術的な部分については、会社によりかなりばらつきがあると言える。日本のアニメと遜色ないデキを見せる作品もある一方、動きが紙芝居同然だったり、作画のレベルが低い作品も目立った。これは、現在中国ではアニメの制作実績を作品の本数ではなく、分数でカウントし、その分数に応じて奨励金が出るという、いわば「質より量」が求められていることが大きい。

次に、企画やストーリーなどの題材のバラエティが乏しい。多くは中国の歴史や伝統文化に題材をとったものか、子供や動物のキャラクターを主役にした作品である。これは、中国ではアニメは基本的に子供の見るものであり、子供の教育に役立つものであることが望ましいという政府の指針があるからである。さらに日本と比べて、アニメの原作となりうるようなマンガ原作の厚みが圧倒的に薄い。その結果、『西遊記』や『水滸伝』『三国志』などの古典を繰り返し題材としたり、日本やディズニーのヒット作品のストーリーやキャラクターを安易に模倣している作品が目立つのが実情である。

もちろん、このような傾向を憂える人は中国のアニメ制作関係者にも多い。今回、会場でインタビューさせてもらった地元杭州で中規模のアニメスタジオを営む社長も、「会社を維持するには、質よりも量を重視せざるをえないのが現在の中国のアニメ企業が抱える構造的な問題。本気でアニメを作っている会社は少ない」と語る。この社長も『抗日小奇兵』という日中戦争を背景にした、子どもが日本兵をやっつける作品を作り、CCTVで放送され、いくつかの賞を受賞した。日中戦争70周年を迎える今年は続編を制作中だという。