最後の他車の動きを予測するための状況提供だが、地図データがあることで、自車の周辺を走る他車の動きをある程度は予測できるようになる。特に高速道路では有効で、合流地点にさしかかっていることを地図データであらかじめ把握できていれば、他車が合流してくるか来ないかを、その時だけ合流してくる他車の存在を確認するためのセンシングを行えるようになる。もし合流してくる他車が確認でき、そのままだとぶつかる可能性があれば、減速するといった操作も車載コンピュータにあまり負荷をかけずに行えるというわけだ。
それがもし地図データがなかったとしたら、どうだろうか。合流してくる他車がいつどのタイミングでやってくるかわからないということになり、常にセンシングして備えなければならなくなる(自動運転になればなおさら)。それだと、車載コンピュータの負荷が増えてしまうのはいうまでもないだろう。
また、一般道でも地図データのあるなしで他車の動きの予測は変わってくる。地図データを持っていて自車がどのレーンを走っているかを把握している場合、例えば交差点が近づいてきて自分が3つあるレーンの中央にいるとしたら、中央から右の右折専用レーンに移った他車は確実に右折するということがわかる。左のレーンに移った場合は直進の可能性もあるが、左折する可能性も半々ぐらいの確率であるだろう。また左のレーンは左折する他車が、横断歩道を渡ってくる歩行者のために一時停止することも多いわけで、クルマの流れがとまるといったことも予測できるわけである。
それから、交差点での右左折、特に細い道路同士の場合は、歩行者や自転車、他車との出会い頭における交通事故の起きる確率が最も高いわけで、それを車載コンピュータが警戒するためにも、地図データがあるとないとでは全然違ってくるのはいうまでもない。
もちろん、まっすぐ走っている時だって、いつどこから子供などが不意に飛び出してきたりするかはわからないといえばわからないが、交差点に比べれば普通はブラインドから相手が飛び出してくる出会い頭の交通事故は確率的に低いのは間違いないだろう。それを、どこでも交差点と常に同じ状況で車載コンピュータが頑張っていたらどうだろうか。負荷がかかりっぱなしになってしまう。負荷がかかりっぱなしとなると、もっと余裕を持たせるためにCPUの処理速度をより速いものにするとか、CPUの数を増やさざるを得なくなるわけで、コストの増加につながるというわけである。
ともかく、どこが事故が起きやすいのか起きにくいか、特に警戒すべきポイントなのかそうでないのかという判断は、地図データがあって車載コンピュータがどこをどう走っているかということを把握できている状況の方が、断然しやすいのだ。
要は、クルマ自身がどこをどこに向かって走っているかというのを把握できることで、つまりはクルマにクルマ用の地図を持たせてナビゲーションを行うことで、運転支援はもちろん、将来的な自動運転もより実現しやすくなるというのが、ゼンリンの考えというわけである。