トランジスタのしきい値を上げてリーク電流を低減

リーク電流の低減には、①トランジスタのしきい値を上げる、②使用していないブロックの電源管理をこまめに行う、といった手法がある。

一般にしきい値電圧(トランジスタのスイッチを入れるために必要とされる最小限の電圧)を高くすればリーク電流を抑制できるが、しきい値電圧を高くするとトランジスタの動作速度が遅くなってしまう。

そこで、トランジスタのしきい値を上げてスタンバイ時のリーク電流を低減する技術となるのが「Active Well Bias (AWB) 」である。

使用していないブロックの電源管理をこまめに行う

②の「使用していないブロックの電源管理をこまめに行う」ことでリーク電流を低減するのも有効な手段となる。たとえば、携帯電話の待機時のリーク電流低減に効果を発揮する。

ここで、i.MX31のパワー領域を見てみよう(図2)。ARM11コアやMMU、L1キャッシュで構成されるMCU領域、L2キャッシュ領域、ペリフェラル領域、PLL領域、I/Oなどに分けられる。これら領域の電圧を下げることで、チップ全体としての消費電力を抑えることができる。

図2 i.MX31のパワー領域

チップ全体の電圧をひとまとめにして下げてしまえば、一気に低消費電力化を図れるだろうが、システムとしての使い勝手は大幅に低下してしまう。そこで、使用していないモジュールやドメインごとに区切り、複数の低消費電力モードを設定した柔軟性の高いパワーゲーティングを行うことがポイントとなる。

このための機能が、不要なモジュールの電源供給を停止する「Partial power gating 」機能や各モジュールごとのクロックゲーティングを行う「Low-Power Clocking Scheme」機能となる。