現在、組み込み機器において「ARMプロセッサ」は高いシェアを誇っている。このARMプロセッサとは、英ARMが提供する「ARMアーキテクチャ」と呼ばれるプロセッサコア(ARMコア)を搭載したプロセッサである。
ARMコアは数多くの半導体ベンダにライセンスされている。ライセンスを受けた各半導体ベンダは、ARMコアにさまざまな周辺機能などを付け加え、独自の「ARMプロセッサ」を提供している。つまり、プロセッサコア部分は「ARMコア」という同じアーキテクチャを採用しているが、周辺機能などはそれぞれ異なり、各社が独自の製品を提供しているのである。
ARMコアならびにARMプロセッサの特徴のひとつに、低消費電力であることが挙げられる。ARMコアの低消費電力のためのしくみについては、既報のとおりである。それではプロセッサ側では、消費電力を抑えるために、どのようなしくみを設けているのだろうか。
本稿では、米Freescaleが提供するARMプロセッサ「i.MX31」を例に、消費電力を抑えるためのパワーマネジメント機能について見てみよう。
バッテリ寿命が製品選択の大きなポイントに
携帯電話の機種を選ぶとき、デジカメの新製品を検討するとき、どの機能を重視するだろうか。これらは、ポータブル製品であることから、バッテリ(電池)寿命は大きなポイントとなるはずだ。いくらワンセグ放送が受信できようが、スマイル検知機能が付いていようが、ごくわずかの時間しか機能できなければ、ポータブル製品としての基本がなっていないことになる。
最近の携帯電話では、待ち受け時間は300時間超、ワンセグ放送の受信時間も数時間などとバッテリ寿命は大幅に伸びている。デジカメでもフル充電で数百枚の写真を撮れるものも多い。
これだけバッテリ寿命が延びても、やはりより長時間にわたって駆動して欲しいというニーズは高い。すなわち、多くの購買者が「バッテリ寿命はポータブル製品を選択する際の重要なファクタ」だと考えているのは確かだ。
一般に、これらポータブル製品の電力の大半はプロセッサで消費される。そこで、プロセッサの低消費電力化を追求することが、最終製品の魅力を大きく向上させることに繋がってくる。