◆Procyon v2.6.848(グラフ9~13)
Procyon v2.6.848
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon
ではもう少しProfessional向けのワークロードではどうか? ということで次はProcyonである。今回はv2.6.848を利用したが、これをPhotoshop 25で動かすとInternal Errorで落ちてしまうため、今回はPhotoshop 24でテストを行った。ちなみにv2.6.920ではPhotoshop 25に対応したのだが、これがリリースされたのはベンチマークデータを取り終わった10月30日の事で、今回は間に合わなかった。
さてまずOverall(グラフ9)を見ると、全体的にIntel系が優勢で、AIのみでAMDが逆転、という感じになっているのが判る。Core i5-14600K/Core i9-14900Kの性能はCore i5-13600K/Core i9-13900Kから明確に上がっているあたりは、動作周波数の差が効いている感じだ。
Photo EditingではImage Retouching(Photoshopでのレタッチ操作)に差は無いが、Batch Processing(Lightroom Classicを使っての一括返還)で結構差がついているようだ。Detailを見てみると、どれかが特に遅いというわけでなく全般的にAMDが遅めという感じ(FaceDetectとかは大差ないが)ながら、ImportとかExportがやや長めに時間が掛かっている。ここでもCore i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの差は明白ではある。大きくは無いが、確実に向上しているのは事実だ。
Video Editing(グラフ11)も傾向は同じだ。正直AdobeのMedia Encoderは拡張命令のサポートが今二つくらいなので、そろそろ別のエンコーダに切り替えて欲しい気がする。AMD系で性能が芳しくないのもそのあたりがAMD系の性能が低い要因(後で出て来るTMPGEnc Video Mastering Worksの方がずっとちゃんとしている)だとは思う。それはともかくCore i5-14600K/Core i9-14900KはCore i5-13600K/Core i9-13900Kより3~8%と結構大きな向上率を見せている。定格の数字より大きいというのは、要するに実際の動作周波数が結構高めになっているという事かもしれない。その分消費電力がどうなってるのか、が気になるところだ。
Office Productivity(グラフ12)もやはりIntel系が有利という傾向で、またCore i5-14600K/Core i9-14900KはCore i5-13600K/Core i9-13900Kと明確に性能差が見られる。ただ一番性能差が見られるのがPowerPointで、Excelとかはそこまで差が無いのはちょっと意外であった。
最後がAI Inference(グラフ13)だが、利用するモデルで結構差が出る。Deeplab v3やInception v4、Yolo v3などではAMDの方が傾向的に有利、ResNet-50は同等、MobileNet v3は混戦とった感じになっている。またここではCore i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの差も不明確である。もっともこうしたAI InferenceをどこまでCPUでやるのか? というのはちょっと悩ましいところであって、長期的にはGPUやAI Engineにオフロードされてゆく事を考えれば、そこそこで良いという考え方もあり得る。まぁAI EngineがCPUに標準装備されるのはもうちょっと後、という事を考えれば短期的にはAI Inference性能が高い事に越したことは無いのだが、結果を見る限り決定的な感じではない。少なくともCore i5-14600K/Core i9-14900KとCore i5-13600K/Core i9-13900Kの差はあまり感じられない(数字が増えている結果もあるが、MobileNet v3などCore i5-13600KがCore i9-13900KをぶっちぎってCore i9-14900Kに肉薄してるあたり、判断が非常に難しい)という感じだ。
◆POV-Ray V3.8.2 Beta2(グラフ14)
POV-Ray V3.8.2 Beta2
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/
こちらもおなじみである。傾向的にはCineBenchと似ているが、CineBenchよりももう少しIntel系CPUの性能が高い。ただこれは以前ここでも書いたが、Intel系CPUはNoise Functionにavx2fma3-intelを、AMD CPUにはavx-genericを使っているあたりで性能差が出ている。Zen 4コアだとavx2fma3が動作する筈なので、このあたりをそろそろ修正したバージョンが出てくれても良さそうなのだが、それはともかくとしてこの差を考慮すると、概ねCineBenchと同傾向として良いかと思う。
◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.27.30(グラフ15)
TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.27.30
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html
逆にCore i9-14900Kになって性能をさらに引き上げたにも拘わらず微妙にRyzen 9 7950Xに届かない、というテストがこちら(グラフ15)。利用しているのはペガシスのx265エンコーダであるが、Ryzen 9 7950Xはおろかやや動作周波数が低めに抑えられているRyzen 9 7950X3Dにも及ばない、というのは中々考えるものがある。ただCore i5-13600K/14600KはRyzen 7 7800X3Dを上回る性能を出しているのは、E-Coreとは言えやはりコアの数の威力が大きいという事を示している。
◆3DMark v2.27.8177(グラフ16~19)
3DMark v2.27.8177
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
では3D性能は? ということでまずは3DMarkの結果を。Overall(グラフ16)では、WildLife/NightRaidといったGPU負荷の低いベンチマークではIntel系がやや有利(このあたりも不思議で、どういう理由でAMD系のフレームレートが低めなのか、が今一つ不明なままである)が、FireStrike以上になると互角というか差が無い感じである。まぁこれは想定通りの結果ではある。この結果はGraphics Testもほぼそのままである。強いて言えば、FireStrikeではCore i5-13600K/Core i9-13900KがCore i5-14600K/Core i9-14900Kを上回るという謎の結果になっているのがちょっと不思議だが、あとはまぁあまり番狂わせもなく、ほぼ互角といったところ。面白いのはPhysics/CPU Test(グラフ18)の結果で、ここでは全般的にIntelの方が有利である。ただNightRaidなどはそのままこれが結果にも響いている感じがあるが、FireStrikeではこの結果にも拘わらずOverallは同等というかAMDの方がややスコアが上である。その理由がCombined Test(グラフ19)で、これが妙にAMD系が有利な結果になっている。全般として、低負荷の環境はともかく負荷が上がるとほぼ変わらないという結果になっているし、ここでCore i5-14600K/Core i9-14900KのCore i5-13600K/Core i9-13900Kに対する優位性を見つけるのは難しい。