性能比較が一通り終わったところで、消費電力について。まずはいつも通り、SandraのDhrystoneとWhetstone、3DMarkのFireStrike Demo、それと待機時の消費電力変動を測定してみた。その結果がグラフ79と80だ。

  • グラフ79:実効消費電力変動(Dhrystone/Whetstone)

  • グラフ80:実効消費電力変動(FireStrike Demo)

グラフ79は筆者にも衝撃だった。というのは、Coffee Lakeのファーストレビューにおけるグラフ122と全然違うからだ。ハードウェア構成は全く同じ(強いて言えばCoffee Lakeのファーストレビュー時のCPUはIntelから借りたES品、今回は普通にAmazonで購入している製品)なだけで、あとはメモリ・グラフィックスカード・ストレージも同一である。基本的にマザーボード側の設定も同じだ。

可能性としてはCPUがES品で爆熱仕様だったか、もしくは他の要因かである。冒頭のテスト環境の際に書いた「特にCore i7-8700Kのスコアが以前のテストと結構異なっている」というのがこれである。

もちろん筆者が測定をミスった可能性もあるのだが、この当時の筆者以外のレビューでもやはり消費電力の多さを指摘しており、本気でこの当時は爆熱だったのだと思われる。

だとすると何が違うか? 一応ES品そのものには問題がないと仮定した場合、冒頭に書いたBIOSのバージョン違いが関係している可能性がある。BIOS Update Historyの0606(2018年1月4日)にある"Update CPU Microcode"は、Spectre/Meltdown対策と考えるにはちょっと期が早い事を考えると、このあたりで何か変更になったのではないかという疑いが捨てきれない。

さすがにもうES品をお借りするわけにもいかないので、確認は不可能だが、そんなわけでCoffeeLakeのFirst Reviewの消費電力の話は忘れていただいて、今回の結果で判断していただきたいと思う。

Coffee Lakeのファーストインプレッションでは、Core i7-7700Kの実効消費電力はピークで123Wほど、平均で111.1W(Dhrystone)/104.9W(Whetstone)で、これに比べると今回のCore i系2製品がいずれも10~30Wほど消費電力が増えているのが分かる。そんなわけでKaby Lake→Coffee Lakeで消費電力が増えることそのものは間違いないのだが、100Wも増えたりはしなかったという話である。

ということで話をRyzen 2に戻そう。ちょっと順序が変わるが、FireStrike Demo(グラフ80)ではどの構成でも消費電力は変わらないので、CPU負荷が軽い分にはそれほど違いがない。

では負荷が増えると?というのがグラフ79であって、Ryzen 5 2700XがRyzen 7 1800Xと同等で、Ryzen 7 2700Xはそこから20Wほど上乗せされている結果に落ち着いている。

このグラフ79と80から、それぞれの処理中の平均値を取ったのがグラフ81、待機時電力との差をとったのがグラフ82となる。やはりTDPを95Wから105Wに引き上げただけの事はあり、相応に消費電力差が大きくなっているのははっきり確認できる。

  • グラフ81:実効消費電力平均値

  • グラフ82:実効消費電力差平均値

表2にDhrystoneとWhetstoneの、消費電力あたりの性能をまとめてみたが、Ryzen 7 2700XはRyzen 7 1800Xよりもやや悪化していることが分かる。ただこれはPhoto04に出てきた「どの周波数でもVcoreを下げられた(=消費電力を減らせた)」と矛盾しかねない結果である。ちょっとこれについて次に検証してみる。

製品名 Core i5-8600K Core i7-8700K Ryzen 7 1800X Ryzen 7 2700X Ryzen 7 2600X
Whetstone
(GIPS/W)
1.40 1.96 1.79 1.36 1.58
Dhrystone
(GFLOPS/W)
4.28 4.72 2.91 2.35 2.69