さて、Apple Pay Cashは米国内での利用に限られており、同じ英語圏であるイギリスやオーストラリアでも、まだサービスがスタートしているわけではない。国をまたいでのApple Pay Cashの取引が発生する場合、為替相場が問題となる。
もしApple Pay Cashの国際間取引が有効となっている場合、筆者が日本の友人に10ドルを送金したらどのように処理されるのだろうか。
この原稿を書いている時点で、米ドルと日本円の相場は1ドル112円20銭前後だ。通常為替手数料が1円程度かかるため、10ドルを1ドル111円20銭で円に交換し、1,112円が送金される。逆に、日本の友人が筆者に1,000円送金した場合、1ドル113円20銭の計算となり、8.83ドルが筆者に送金されることになる。
もしそうした国際間取引が実現する場合、Appleがこうした為替処理をApple Pay Cashで行うのか、そのレートはどのように決定するのか、という問題が残る。1つの解決策は、Apple Pay Cashを全てドルベースで扱うという方法だ。
つまり、日本でも英国でも、ドルベースでの送金を行えば、Apple Pay Cashを使う上では、為替レートを考える必要はなくなる。ただし為替レートは常に変動するため、受け取った時点での価値が保たれるわけではない。急激なドル安が訪れれば、1,000円分だったドルが800円になってしまう事だってあり得るのだ。
また、日本でApple Pay Cashを店頭での支払いに使う際にも、その時点のレートが適用され、また為替手数料が差し引かれるため、やはり1,000円分の価値をそのまま店頭で利用できない問題点が残る。
そのため、ドルベースのApple Pay Cashがそのまま各国に展開されていくとは考えにくく、当初は各国ごとにサービスが独立して動くような仕組みが前提となるのではないか、と考えている。