AppleはiOS 11.2をリリースした。このアップデートには、12月2日に発生した通知関連で再起動を繰り返すバグの修正や、iPhone X/ 8/8 PlusとBelkin、MophieのQi対応充電器の組み合わせによる高速ワイヤレス充電のサポートなどが含まれる。
そしてもう一つ、非常に重要なアップデートが含まれていた。それは、Apple Pay Cashが有効化されたことだ。
Apple Pay Cashは、iOS 11の新機能として2017年6月の世界開発者会議WWDC 2017で発表された、Appleによる個人間送金の仕組みだ。当時のプレゼンテーションでは、iMessageアプリとして提供され、追加のアプリなしで手軽に相手に送金できる手段を、iPhone、iPad、Apple Watchで提供するとしていた。
米国でスタートしたApple Pay Cashを早速セットアップして、分かったことをお伝えしていこう。
Apple Pay Cashは、Appleデバイスにおいて「個人間送金」の仕組みを追加アプリなしで実現するサービスだ。
これまで米国では、Venmo、Square Cashといった個人間送金アプリが人気で、FacebookもMessengerに同じ仕組みを取り入れるなど、メッセージングアプリには「入っていて当たり前」な機能となっていた。クレジットカード決済が主流となっている米国において、いわゆる割り勘をする際に現金を持っていなくて困る場面は多々あり、それを解決するのがモバイルでの個人間送金だった。
Appleは個人間送金の仕組みを、Apple Payの機能として用意し、標準アプリであるWalletで管理し、メッセージアプリでiMessageを通じてやりとりする手段を整えた。セットアップの手順から、どのような仕組みなのかを理解できる。
Apple Pay Cashを有効化するには、iPhoneを使用する国が米国になっている必要がある。現状、米国内でのサービスとなっているからだ。「設定」アプリの「WalletとApple Pay」の画面の冒頭には「Apple Pay Cashを有効化する」というスイッチが現れ、これをONにするとセットアップを始めることができる。
まずセットアップをするには、Apple IDのパスワードが求められる。続いて、個人情報の入力へ移る。ここでは、法的な氏名、住所、社会保障番号の下4桁と生年月日の入力する。手順はこれで終了だ。
すると次の画面で、Apple Pay Cashカードが発行され、その設定画面が開く。画面の下部には、Apple Pay Cashカードのトークン番号の下4桁が表示され、カードのネットワークがDiscover Debitと表示される。
Apple Pay Cashのセットアップの背後で起きていることはこうだ。「Apple IDに対してDiscoverのデビットカードが発行」され、「デバイスに対してNFCトークンが発行」される、というものだ。
今回セットアップに使ったのはiPhone Xだったが、Apple Pay Cashセットアップ後、同じApple IDで使用しているiPhone 8 PlusのWalletの設定画面にはApple Pay Cashのセットアップを促す画面が表示されていた。その画面に進むと、前述のような個人情報の入力を伴わず、Apple Pay CashカードがiPhone 8 Plusにもセットアップされた。つまり、先ほどiPhone X上で発行の手続きをしたDiscoverのデビットカードと紐付いた新たなNFCトークンが、iPhone 8 Plusに対して発行された、という理解で良いだろう。
1つのApple IDに対して発行されるApple Pay Cashは1つに限られており、そのトークンを各デバイスに設定することで、残高情報などを共有する仕組みとなっている。なお、Discoverネットワークのデビットカード発行をホストしているのはGreen Dot Bankで、米国内でプリペイドカードの発行を手がけている銀行だ。ちなみに、Discoverネットワークは、日本ではJCBとアライアンスを組んでいる。