地に足のついた発表は自信の表れか

前日に開催された孫社長による基調講演は、ソフトバンクグループが進む方向性が中心に示され、また壇上に登場した企業も5年後、10年後に成果を期待するような、いわば将来の夢、ビジョンに的を絞ったものだった。二日目の基調講演は、それと比べるとずっと地に足が着いた、現在のビジネスに焦点を当てたものとなっていた。もちろんそのうちのいくつかは近い将来の内容も含んではいるが、基本的には技術的にもめどの立ったものばかりだ。

そして何より、ソフトバンクが今、力を入れているものがはっきりとわかるものだった。それは公演中にも何度も繰り返されていたとおり、IoT、AI、そしてロボット/RPAだ。ソフトバンクのコア事業はモバイル通信だが、モバイル通信網を所有しているという強みを生かし、IoTからのデータ収集から分析、利用までをワンセットで提供できる点は大きい。これから2020年にかけてIoTの本格的な普及が始まるが、ソフトバンクとしても十分に準備ができているという自信があるのだろう、そのトレンドに関わる部分をしっかりアピールしていた。

もうひとつ興味深かったのは、ソフトバンクワールド開催の直前に締結され、基調講演にも登壇した、WeWorkとの提携だ。WeWorkは海外で非常に高い評価を得ているレンタルオフィス企業だが、その他壇上に上がったセキュリティ関係の2社と異なり、不動産事業は、これまでソフトバンクが手がけてきた事業とは大きく離れた分野だ。普通に考えれば、いかに勢いのあるスタートアップといえど、提携するメリットは少ないように思える。これだけが異質だったのだ。

しかしWeWorkが評価される本質は不動産そのものではなく、これまでの枠にとらわれない新しい働き方の提案と、そこに集まる人々のコミュニティーであったり、それがもたらすクリエイティブへのきっかけ・出会いなどだ。ソフトバンクとしてはWeWorkと共同でスタートアップ企業やフリーランスに対し、こうしたコミュニティーに加わる場所を提供することで、新時代にふさわしい新しい才能の誕生に寄与しようとしているのではないだろうか。それはソフトバンク自身にとっても新たな投資先・提携先となるかもしれないし、大きな目で見れば孫社長が掲げる「人類に最も貢献する企業」を生み出すことに繋がるかもしれない。来年オープンするという東京のオフィスがどのようなものになるのか、非常に楽しみだ。