Clipsは、積極的にビデオにデコレーションを加えながら、しかも撮影してすぐに共有できるように工夫されている。
冒頭では「カメラ」アプリと「iMovie」での作業とは異なると指摘したが、実際のところはそれらを融合させたようなイメージである。1分のビデオを最短1分で作れることを考えると、「ビデオの録画/編集とライブ配信の間に位置するアプリ」と表現することもできるだろう。
クリップとして情景を切り取る作業こそしているが、それ以外には時間をかけない、というアイディアだ。デコレーション程度しかしないSnapchatやInstagramのストーリーより作り込める点は、よりクリエイティヴなものを目指す向きには丁度良い。
ただ、iPhone用のビデオアプリを見渡してみると、編集という作業を自動化する流れは既に起きていたのだ。
筆者が気に入っているアプリに「QUIC」がある。GoProに買収されたこのアプリは、ビデオとテーマを選ぶと、自動的に音楽とマッチした映像を作ってくれる仕組みだ。GoProというと、撮りっぱなしのビデオが多いのだが、その傾向を変えていきたいというアイディアからの買収劇も非常に合点がいく。
同じような機能は、Appleの標準アプリ「写真」に搭載された「メモリー」機能でも実装されていた。メモリーとしてまとめられた写真は、自動的にスライドショーが作成され、長さや雰囲気を変えると、編集やBGMが変わる。もちろんスライドショーをビデオとして書き出し可能だ。
例えばどこかに旅行する際、iPhoneで写真やビデオを撮っておくだけで、勝手にビデオが仕上がっている。これがQUICや「写真」で採用されている自動編集だ。
思い出を振り返るには十分の仕上がり。だらだら、あるいは細々と撮影したビデオは、共有や振り返りに向かないが、こうした自動編集が挟まることで、見栄えのするひとまとまりの動画になる。