「オールマイティに利用できるモバイルPCというだけの考え方では、顧客ニーズのすべてに応えられなくなってきた。とくに、1kgを切る軽量モバイルPCが欲しいという顧客の声が高まってきた。そこで、『軽さ』にこだわったモバイルPCの開発を開始することを決定した」と、安藤マネージャーは、LIFEBOOK UH75/B1の開発の発端を振り返る。
だが、軽さを追求することを決めた富士通クライアントコンピューティングの手の打ち方は徹底していた。
同社の竹田弘康取締役専務が現場に指示したのは、「軽くするためだったら、どれだけ資金を使ってもいい。液晶をはじめとする主要部品にも、汎用品を使わずに、ゼロから部品を選定してほしい」ということだった。
富士通クライアントコンピューティング 事業本部コンシューマビジネス事業部第一技術部の河野晃伸マネージャーは、「設計、開発現場には、大きなプレッシャーがかかった。だが、その一方で、この製品にかける経営層の期待の高さを感じた」とする。
また、安藤マネージャーは、「この製品には、いま一度、富士通のプレゼンスを世の中に発信するという強い想いがあった」と発言。石川マネージャーも、「2016年2月にスタートした富士通クライアントコンピューティングの第1弾として、象徴的な製品を開発する使命があり、その中核的製品に世界最軽量モバイルPCを位置づけた」と語る。
1塗装1g - 4層塗装のレッドカラーにも挑戦
開発チームは、軽量化の目標値に777gを掲げ、それにあわせて「チーム777」というプロジェクト名が与えられた。製品の開発コードネームは、1gでも軽い製品を追求する姿勢を反映して「Gram」と命名。いずれも、徹底した軽量化を追求する意思を込めたものであり、現場の意欲を反映して名付けられたものだ。
777gという目標設定は、その当時の最軽量であるNECのLAVIE Hybrid ZEROの779gを下回るとともに、語呂の良さから掲げた数値でもあった。
そして、開発の途中から、富士通のコーポレートカラーである赤(サテンレッド)を天板全面に配したカラーバリエーションの追加を決定したのも、これを富士通クライアントコンピューティングを代表する製品に位置づける意思を込めたものだったといっていい。
実際、新製品発表会見では、富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長自らが、象徴となるサテンレッドのLIFEBOOK UH75/B1を手に取って、自信を持って製品を紹介してみせた。
実は、本体色のサテンレッドは、LIFEBOOK UH75/B1にだけ用意されており、913gの上位モデル・LIFEBOOK UH90/B1はピクトブラックのみで、サテンレッドは設定されていない。サテンレッドモデルでは4層塗装が用いられ、1層増えるごとに約1g増加し、軽量化には不利だ。また、店頭向けモデルにおいては、天板の中央に表示された富士通のロゴマークに、印刷ではなくバッジを採用しており、これも重量増につながる。
さらに細かい話だが、サテンレッドカラーでは、ひとつひとつのキーのサイドにも赤いカラーを入れている。「当初は、ピクトブラックモデルと同様に黒いキーボードで考えていたが、利用者に対するインパクトと、店頭展示でのインパクトを考えて施した」(安藤マネージャー)という。
重量増となるサテンレッドカラーをあえて採用しながら、世界最軽量に挑戦したところにも、富士通クライアントコンピューティングが、この製品を同社の象徴的製品に位置づけようとしたことが裏付けられる。
軽量化への取り組みにおいて、最初に同社が取り組んだのが、この分野で先行するNECのLAVIE Hybrid ZEROを徹底的に解析することだった。