筆者は普段通話する際、メッセージのやりとりの中で「今電話できますか?」と聞いてかけ始めることが多かった。その理由も、単なる通知として着信だと、自分も相手も取り逃してしまうことが多いし、チャットを前提としたコミュニケーションの場合、相手の返事があったときが手空きの時、という暗黙の了解があったからだ。
iOS 10のユーザー体験の変更によって、メッセージ系アプリの音声通話機能におけるこうした共通認識は、変わるかも知れない。
一方、チャット派生ではないVoIPアプリのことを考えると、この電話アプリのAPI開放は、切望だっただろう。通常のVoIPアプリは電話として使われることしか前提ではないため、チャットでのやりとりから通話に、という流れがなかったからだ。
Appleが電話アプリをサードパーティーに開放した背景に、2015年に結んだCiscoとのパートナーシップがあった。iOSデバイスを、Fortune 500企業の95%が採用するCiscoのネットワーク環境に最適化する取り組みで、Wi-Fiを含むネットワークや、音声通話の内線などが含まれる。
音声通話は、ビジネスの上では重要なツールの1つであり、例えば内線をアプリで実現するソリューションを導入している場合、前述の音声着信のAPIの開放は、iPhoneを外線と内線を兼ねるデバイスとしての利便性を高める点で、非常に大きなインパクトを与えることになる。
日本でも、アプリによってオフィス向けの電話を実現するサービスが揃っている。例えば、筆者が副校長を務めるコードアカデミー高等学校では、クラウドベースのPBXに切り替えたことで、スタッフの手持ちのスマートフォンがアプリから内線電話として利用でき、学校内にいなくても、ネットワークにつながりさえすれば、内線・外線通話が利用できる仕組みだ。
iOS 10の電話アプリのAPIをサポートしたアプリを開発することによって、同様の機能を実現することが期待される。