iOS 10では、こうした問題にメスを入れた。Appleが挙げたiOS 10の10の機能のうちの1つに、VoIPがあった。アプリ側で電話アプリのAPIに対応することで、電話番号やFaceTime着信でなくても、同様の着信画面を利用できるようになる。
WWDC16の基調講演では、「What's App」の音声着信画面を例にしていたが、着信画面には名前、着信元のアプリ名、そしてその人の顔写真が背景に表示される。とはいえ、電話番号への着信なのか、アプリからの着信なのかは特に気にする必要なく、「通話する」という体験ができるようになるはずだ。
この機能をAppleの上級副社長、クレイグ・フェデリギ氏は、ロック画面での着信に加えて、電話アプリ内の「履歴」にも表示されるほか、「よく使う項目」に追加することもできると説明した。さらに、紹介しているスライドには、着信をその場でとらず、後から通知するボタンや、メッセージで返信するボタンも、通常の音声通話着信と同じように用意されていた。
これらの新機能によって、アプリでの通話は、iPhoneにおいて、より使いやすいものへと進化していくことになるだろう。
Appleとしては、キャリアの電話番号による音声通話を優遇する必要がないところまで、アプリでの通話利用が安定し、伸びていると考えているようだ。FaceTimeがAppleデバイス間でしか利用できないため、サードパーティーアプリへ開放して、利便性を高めようとしている。
しかしこの施策は、おそらく今後も自社デバイス間でのみの利用にとどめるであろうiMessageとメッセージ系アプリの関係とは異なる。Appleは、通話アプリの利便性を背景に、FaceTime・FaceTimeオーディオの利用を促進し、最もセキュリティの高いVoIPサービスが利用できる唯一の選択肢として、iPhoneやiPadといったiOSを広めることもできたはずだ。