ここまで書いたところで、写真に時間軸を持たせるLive Photosのアイディアを応用した、新しい撮影モードができないか、と思いを巡らせはじめた。例えば、ライトフィールドカメラというアイディアだ。

人が入った風景写真を撮影した際、手前にいる人にピントを合わせると、背景はボケる。逆に風景にピントを合わせれば、人物はボケる。距離が異なる対象物を撮影しようとすると、露出の調整にもよるが、どちらかにしかピントを合わせることができないのが通常の写真だ。

ところが、米Lytroが発表したライトフィールドカメラ「LYTRO ILLUM (ライトロ イルム)」で撮影した写真は、撮影した後から、パソコンなどでクリックした場所にピントが合った写真を見ることができる。そのため、前述の写真の場合、人物をクリックすれば人の表情をくっきりと表示し、背景をクリックすれば景色のディテールを楽しむことができるのだ。

ライトフィールドカメラは新しいデジタル写真の表現として注目されたが、通常の写真撮影でもメリットはある。失敗写真の代表例に「ピンボケ」があるが、これをなくすことができる、後からピントを調整することができるようになるからだ。

さて、iPhone 6sシリーズに搭載されたLive Photosの機能を振り返ってみよう。1枚の静止画と、前後1.5秒ずつの動画が記録された「写真」。現在はビデオ部分の解像度も低く、また動きのあるものを切り取る際の「動き」まで記録しようというアイディアだ。

もし、この3秒間の動画部分の解像度が静止画並みに上がり、かつ、ピントを手前から奥までずらしながら記録したらどうだろう。LYTRO ILLUMで撮影できる、「後からピントを合わせられる写真」を実現することができるのではないだろうか。