続いては、ジオ技術研究所が今最も力を入れている技術であるデジタル地図3DレンダリングミドルウェアのWAREM(ワレム)について。「デジタル地図3Dレンダリング」を行うミドルウェア(OSとアプリケーションソフトの仲立ちをするソフトウェア)とはどのようなものかというと、2D地図データ中に建物の高さ情報もセットになっていれば2D地図を3D地図化して、しかもリアルタイムに描画できるという内容だ。人の目線により近づけた地図表現を可能としているものである。
具体的に「人の目線により近い」とはどういうことかを説明しよう。一般的な2D地図は、カーナビや地図アプリでお馴染みの「垂直平行投影」と呼ばれる形式で描画されており、真上から俯瞰したものがほとんどである(画像20)。確かにこれは見慣れているのもあるが、道路同士のネットワークがわかりやすいという大きなメリットがある一方で、拡大すると狭い範囲しか見えず、逆に広い範囲を見ようとして縮小すると今度は細かいところが見えないというトレードオフ状態が生じてしまうのはご存じの通りだ。
要は、目的地を目指す時にどういうルートをたどるのかを詳細な拡大地図で確かめようとすると、ルートの進行方向に沿ってユーザーがわざわざ操作をして表示範囲をスクロールさせるか、広域用の小縮尺に変更する必要がある。結構面倒に感じている方も多いのではないだろうか。
そこで、WAREMは2D地図を3D化して斜め上から見るという表示にすることで、その問題点を解決(画像21)。自車近傍である手前は拡大して詳細に見える一方で、自車がどういうルートでどの方向を目指して進んで行くのか、先も見通せるようにもなるのである。
なお建物を立体化するといっても、大多数の建物は見通しを悪くしないように半透明で表示し、ランドマークとなる建物だけが目立つ形で表示される仕組みだ。基本的に高層ビルは半透明でも目立つが、ランドマークとなる有名な建物はカラーで表示される。そのほか進行方向にある遠方の地名が表示され、山なども名称が表示されるのでわかりやすい。
先程「人の目線に近づけた地図表現」としたが、実際にはサンプル画像の東京タワーの見え方からすると、おそらく100~200m位の高さから見た視点なのではないかと思われる。要は、そのぐらいの高さのビルから見た景観という感じに近い(ただし手前はかなり拡大されている)。
ともかく、近傍の詳細情報を得られる大縮尺地図と、目的地までのルート全体を把握しやすい広域の小縮尺地図の両方をいいところ取りしているのがWAREMだ。通常の3D地図というと、複雑な交差点で曲がる際に表示されるようなドライバー視点に近いかなり低いものなので、周辺の建物もあってあまり先を見通せない画像なのはご存じの通り。しかし、それをもっと視点を高くできるのがWAREMなのである。ちなみにどのようなものなのかを解説した動画も同社公式サイトのWAREM紹介ページに用意されているのでご覧いただきたい。