まとめと考察
ということで長々とレポートを書いてきたが、基本的にバランスの良い製品であるという印象を強く受けることになった。省スペースPCとかノートPCにはこの程度の性能があれば十分であろうし、省電力に関してはかなり良くなったと思える。
その一方でハイパワー向け、例えばグラフィックスカードを複数枚挿してフルにゲームを楽しむとか、エンコーダやレンダラなどをバリバリ使うといった用途には、CPU性能の観点で十分とはいえない気がする。そのあたりを勘案すると、AMDはA10-7850Kの競合をCore i5にしているが、やはりCore i3の方が競合としては適切な気が個人的にはしなくもない。
CPU性能に関しては、そもそもAMDがBulldozerアーキテクチャを導入した時点でIPCよりThroughput Computingを重視するとアナウンスしており、その方向性を現在も堅持していると思う。問題はそれにも関わらずBulldozer/PiledriverともにそのThroughputが今一歩だったことだった。これがSteamrollerでようやくまともになったというところだろうか。
そう考えると、次のExcaliburでIPCが向上するか? というと期待薄で、引き続きThroughputの改善に努めるという方向性になりそうな気がする。その場合に絶対性能はどうなるか? というと、こちらはHSAを利用したHeterogeneous Computingをさらに推し進めてゆくという方向性な訳で、なので次世代製品であるCarrizoはさらにGPU性能が上がることが期待できる。
おそらく少なからぬ自作ユーザーが、Haswellに比肩しうる性能を持つCPUコアを期待しているとは思うが、Kaveriの実装を見る限りそうしたものが短期的に出てきそうな気はしない、というのが正直なところだ。
可能性を感じる点を挙げるとするならば、次のExcaliburの設計には十分な時間があることだろう。RichlandというかTrinityからKaveriまでにはずいぶんと間が空いたが、その主要因はもっぱらGlobalfoundriesが28nm SHP Processの立ち上げに遅れたからである。
つまり物理設計だけが延々と遅れた訳で、その空いた時間に次のExcaliburの論理設計を進める時間は十分にあったはずだ。だからメインはThroughput改善であっても、細かくIPCを引き上げる細工をする時間は十分に取れているはずなので、そのあたりにわずかな希望はあるかもしれない。
もっとも個人的には、Kaveriの投入によってHSAを利用したHeterogeneous Computingが結構快適に動くようになったことで、むしろこちらを利用したアプリケーションが増えてくれる方がずっと健全な未来という気はするのだが。