講演冒頭で自己紹介を行った孫氏は自らの出自を紹介、朝鮮半島出身の移民であり、日本の閉鎖社会で鬱屈した生活を続けながら高校時代に渡米、そして現在に至る起業のチャンスをくれたのは"公平"な米国社会だとつづった。折しも同氏が米国でやってきたのは新しいコンピュータ産業が花開く直前のシリコンバレーであり、以後のビジネスもそれに沿ったものとなったわけだ。
特に1990年代以降のインターネット世界で米国は世界の中心にあり、それが米国経済に貢献してきた割合も大きい。ところが、こうした状況にもかかわらず米国の通信環境は主要国でも貧弱な部類であり、利用料金も高止まりしている。これは「真の競争(Real Fight)」が行われていないからというのが同氏の主張なのだ。
例えば、比較に出したLTEの国別速度平均で、米国は世界の主要国でも最低クラスであり、フィリピンと比較してわずかに上回っているにすぎないという。また米国のポストペイド契約ARPUは、世界の平均ARPUが年々下落傾向にあるにもかかわらず、逆に上昇を続けていると指摘。これはユーザーにとっての不利益であり、将来的な産業促進にとってマイナスに作用する可能性があるとする。