肝心の音質だが、圧縮音源と聴き比べれば差は明らか。聞こえにくい帯域といえど、カットされてしまうと"場の雰囲気"の再現性が大きく変わるからだ。かんたんにいうと、ハイレゾ音源のほうが緻密で臨場感があり、輪郭までわかるような音に感じられる。聴き慣れた曲もハイレゾ品質の音源で聴き直せば、気付かなかった細やかな楽器の音色や歌い手の息づかいまで感じ取れるかもしれない。そして同じハイレゾ音源でも、情報量が多いほど楽器や声の生々しさが増すことだろう。
ただし、圧縮音源といえど人間の声など重要な帯域についてはカット量を抑えるなど工夫されているので、曲のサビ部分だけを聴くような方法では違いがわかりにくいかもしれない。さらに最近の傾向として、音圧を強調するマスタリングが一般化しダイナミックレンジの狭い録音物が増えたという事情があり、ソース選びにも配慮が必要だ。
そのうえ、再生機器側が「ハイレゾ対応」かどうかというそもそもの問題がある。次項では、iPhone(5s)を例として、スマートフォンのハイレゾ事情について解説してみよう。