もうひとつ、ハイレゾには「不可逆圧縮(ロッシー)のコーデックを用いない」という了解事項もある。AACやMP3といった圧縮コーデックは、CDなどソースとなる音源をエンコード(圧縮)するとき、人間の耳には聞こえにくいとされる帯域 -- 人間の可聴帯域とされる20Hz~20KHzのうち16kHz以上の高音域など -- を大きく切り捨てることで圧縮率を稼ぐ。つまり"情報が削られている"わけで、どれほど高価な再生機器を利用してもオリジナルの音は再現できない。だからハイレゾ再生環境では、圧縮するにしても情報カットを行わない可逆圧縮(ロスレス)コーデックを利用するか、無圧縮音源を利用する。

■表:パソコン/スマートフォンで利用される主なサウンドフォーマット

フォーマット 圧縮/非圧縮 音質
MP3 圧縮(ロッシー) エンコード時にカットされる音域があり、劣化する。ビットレートの設定次第で改善される
AAC 圧縮(ロッシー) エンコード時にカットされる音域があり、劣化する。ビットレートの設定次第で改善される
FLAC 圧縮(ロスレス) エンコード前後の音データは理論上同一であり、劣化しない。多くのオーディオ機器にサポートされているため、ハイレゾ音楽配信サイトの採用例が多い
ALAC 圧縮(ロスレス) エンコード前後の音データは理論上同一であり、劣化しない。Apple製品が標準対応していることから、対応するオーディオ機器も増えている
WAVE 非圧縮 リニアPCMのサンプリングデータ用フォーマット
AIFF 非圧縮 リニアPCMのサンプリングデータ用フォーマット
DSD 非圧縮 スーパーオーディオCD(SACD)の記録フォーマット。データレートは2.8MHzと5.6MHzの2種類がある