そして『イヴの時間 劇場版』の観どころは?

――今回の劇場版において、一番観てほしいポイントはどこになりますか?

吉浦監督「今までWEB版をしっかり観ていただいた方に対しては、新規シーンだけではないということを言っておきたいですね。全体がもう違う体験になっていると思います。音の力もそうなのですが、WEBの画面を目の前で観ていたのとは、体感からして違っているので、もう全体的に違う作品だと思っていただいてもよいぐらい、印象が変わってくると思います」

――逆にはじめて劇場で観る方には?

吉浦監督「発表スタイル上、やはり一度も観たことがないという人はたくさんいらっしゃると思います。そういった方には、『イヴの時間』というひとつの物語を、素直に楽しんでいただきたいですね。今回の劇場版は、決してWEB版を観た人のためだけに作ったわけではなく、ひとつの作品として作ったつもりです。WEB版のときから、そのまま劇場にかけてもいいぐらいのつもりで作っていましたので、ぜひ一本のアニメーション映画を観るつもりで来てください」

――主題歌として今回の劇場版にはKalafinaの歌が採用されていますね

吉浦監督「最初はどうするか、いろいろと迷ったのですが、やっていただいて本当に良かったと思っています。最初に歌をいただいて、それをもとにラストシーンの絵コンテを描いたところ、梶浦(由記)様が、またその絵にあわせて歌詞を書き直してくださったんですよ……多分。実際に観た方から『歌詞と絵があっていて良い』という感想をいただいたのですが、まさにその通りで、そういった意味でも、エンディングテーマは聴きどころになっていると思います」

――主題歌に対する要望などはありましたか?

吉浦監督「最初の段階で、新たに歌を入れようと決めたんですけど、歌を入れるのであれば、『イヴの時間』を裏側から観るような、ある種切ない感情を出せるものにしたいと思っていたんですよ。そういう意味では、あの歌のトーンはバッチリですね。Kalafinaさんというとやはり『空の境界』のイメージだと思われる方も多いと思いますが、『イヴの時間』の世界観がより広がる素晴らしい曲になっています。梶浦様は幅広い曲を作っていただける方なので、今回の曲は、『イヴの時間』の世界観にあわせつつ、さらにその世界が広がるようなものを、ある意味狙って作っていったような感じです」

――やはり劇場作品という点では、「音楽」「音響」も大きなポイントを占めますよね

吉浦監督「自分は作り手なので、これまでどんなシーンでも、泣いたり、目頭が熱くなることはなかったのですが、今回の劇場版を大きな画面で観たとき、思わず涙が出てきてしまったんですよ。やはりこれは、大画面の力に加えて、立体的な音響が大きく作用していて、同じ作品なのに、まったく感情の与え方が違ってきているんだと思いました」


喫茶店「イヴの時間」へのこだわりは?

――作品に出てくる「イヴレンド」が実際に商品化されることになりました

吉浦監督「まさかの商品化ですね(笑)」

――喫茶店という舞台にはかなりこだわりがあるというお話ですが?

吉浦監督「自分は店内とか内装とか、そういった空間が好きで、喫茶店やカフェの場合、コーヒーというよりは、その場所に行くこと自体が好きなんですよ。だからハードロックカフェとかもけっこう好きだったりしますし、ちょっと変わったお店があると聞くと、それだけで行っちゃったりもしますね。なので、『イヴの時間』の店内デザインに関しては、好きが高じてこだわった部分もあります。こんなお店があったらいいなっていう感じで」

――本当にいい店ですよね。すごく贅沢な造りで

吉浦監督「ですよね。あれが建築的にありえるのかどうかわからないのですが(笑)」

――地下に降りるけど、吹き抜けで、ロフトがあって……

吉浦監督「しかも外に看板が一切ない。高校の帰り道にそんな秘密の場所に寄れたらいいな、そんな妄想のようなものが昔からあったんですよ。そして、もちろん女店主で、しかも美人のお姉さんで、その人とツーカーの仲になる。もうこれは自分の妄想ですね(笑)」

――喫茶店にこだわると、やはり次はコーヒーということになるわけですね

吉浦監督「コーヒーだと淹れ方や器具が華やかじゃないですか。サイフォン式とか水出しとか。紅茶にもいろいろとあるとは思うのですが、やはり絵になるのはコーヒーではないかと思うんですよ」

――そして出てくるのが「イヴレンド」

吉浦監督「『イヴブレンド』『いや、イヴレンド』。こんな間の抜けたやり取りが最初に頭に浮かんで、本当に軽い気持ちだったんですけどね。まさか実際に商品化されるとは……。なぜ、こんなことに(笑)」

――コーヒー缶やコーヒーカップなども、作中のものがそのまま再現されています

吉浦監督「本当にビックリしました。コーヒーカップは実物を見て、自分でも欲しくなったので、ぜひ商品化してほしいなって思いました(笑)。そのコーヒーカップにイヴレンドを淹れて飲んでみたいですね」

(次ページに続く)