はたして『イヴの時間』2ndシーズンに繋がるのか?
――新規シーンについて言えば、エンドクレジットから先は、さらっと観てしまうところですが、今回は重要ですよね
吉浦監督「ラストシーンへのエンドクレジットからの一連の流れは、個人的にも気に入っている箇所です。あそこにドラマを感じてほしいですね。実は最初に絵コンテを書いた段階では、クレジットパートの予定はなかったんですよ。ただ、幸いにして良い曲をいただいて、その曲を聴いたとき、『あ、これはもうひとつ物語を作らねば!』と思って追加したという経緯があります。かなり制作末期の段階だったのですが、思い切ってコンテを切り、急遽追加しました」
――最後のシーンはあまり説明がないので、観る人によって、さまざまな想像が膨らむのではないかと思います
吉浦監督「さらにそのシーン中の、あるカットに注目してみてください(笑)」
――そのあたりについては、新たな『イヴの時間』で……ということを感じさせるのですが、ちなみに2ndシーズンの予定はいかがですか?
吉浦監督「もちろん作りたいとは思っているのですが、すぐ次にとなるとなかなか難しくて……。制作形態も反省点が多いんですよ。少人数で作ったのはいいものの、やはり一話ごとにかなり皆さんをお待たせさせてしまいましたから。2カ月に1本なうえに、途中で5カ月もあいてしまったり……。次にやるとなると、せめて月に1本は作れる体制でやりたいですね。実際作っていて、肉体・精神ともにかなり辛いものがありましたから(笑)」
――そうなると、吉浦監督といえば個人制作といったイメージからは大きく変わっていきますね
吉浦監督「今回も第1話と第6話を比べると、後者はほかのスタッフに任せた範囲がやや増えているんです。ただ、それは最初から想定していたことで、一人で作り込むのではなくて、もう少したくさんの人と一緒に作りながらも、そこに自分の作家性はちゃんと内在させる。そんな実験をやっていたので、次作では、そこをもう少し広げていきたいと思っています」
――監督・脚本というあたりは引き続き担当なさると思いますので、CG制作などの負担を減らしていくという感じですか?
吉浦監督「そうですね。最初の頃、お店の内装などのCGもすべて自分一人で作っていたのですが、後半のほう、たとえば倫理委員会の部屋だったり、マサキの部屋だったりは、大まかなレイアウトを自分で組んだ上で、詳細なモデリングはアウトソーシングしているんです。だんだんと自分が押さえなければならないところがわかってきたので、それ以外に部分は、できるだけスタッフワークで作りたいと思っています」
――個人制作の場合、一人でやるしかない場合と、人には任せられないから一人でやる、いわゆる職人的な意識というケースがあると思いますが、吉浦監督はどちらのタイプですか?
吉浦監督「『イヴの時間』を作ってみてわかったのですが、どうも自分は"みんなで作りたい派"ですね。もちろん骨格となるコンテなどは自分で書きたいと思っていますが、自分のコンテに対して予想以上の反応が返ってくることもあって、『これがグループワークの力だな』って思いました。もちろんグループならではの苦労もありますけど(笑)」
――思い通りにならないことが多々あるのではないかと思うのですが?
吉浦監督「ただそうなった場合でも、何とか自分で制御できるのがデジタル制作のメリットだと思います。苦労すれば何とかなるんですよ(笑)。それを考えたら、グループワークにシフトしてもいいのではないかと思っています。大手のアニメプロダクションとまではいきませんが、小規模なスタジオというのを最終的には目指したいですね」