吉浦監督にとってのアニメとは?

――ちなみに吉浦監督は子どもの頃からアニメをよく観ていましたか?

吉浦監督「実はアニメをちゃんと観だしたのは高校生のころの『エヴァンゲリオン』からですね。けっこう雑食で、アニメも好きだし、映画も好きだし、マンガも小説も好きだし、それに演劇も好き……。割と何でも面白いと思って観るタイプでした」

――その中でもアニメでは『エヴァンゲリオン』を観て衝撃を受けた感じですか?

吉浦監督「『エヴァンゲリオン』を観て、TVアニメって面白いんだなって思いました。テレビで放送されているもので、こんなに毎週観たいと思う作品があるとは思っていなくて、それからアニメにはまり出した感じですね。ただそれ以降も、テレビの作品より、劇場アニメやちょっとコアなOVAとか、そちらがメインでした」

――『エヴァンゲリオン』の劇場版にはクリエイターとして参加なさっていますよね

吉浦監督「まさか自分が関われるとは思っていなかったので、本当にビックリですよね。実際に参加してみて、あらためて面白いなって思いました」

――ああいった作品をみると、やはり大きなチームで大きな作品を作るのも良いかなって思いますか?

吉浦監督「ちょっと憧れますよね。ロボットが出てきて、アクションがあって、躍動感があって、熱い展開があって……。やっぱりいいですよね」

――そういった作品も作ってみたいですか?

吉浦監督「今まで作ってきた作品は、言ってみれば会話劇、室内劇が多かったので、次は躍動感のある作品も作りたいなって思いました」

――そうなると、やはり個人制作では厳しいですよね

吉浦監督「そうですね。でも、幸い『イヴの時間』を作ったおかげで、かなりアニメ業界のほうでも知り合いの方々が増えてました。ありがたいことです。これは『イヴの時間』を作ったことによる効果であり、次回作に繋がったところだと思っています」

――ちなみに『イヴの時間』以外で、次回作の構想はありますか?

吉浦監督「いろいろとあって、その中でも一つやりたいものが決まっているのですが、その前に短いものをいくつかやって、そのステップアップで次の作品を作るというワークフローを考えています」

――以前、実写作品を作りたいとおっしゃっていましたが、そのあたりは?

吉浦監督「実写だとノウハウの蓄積がイチからになるので大変なんですけど、やっぱり作ってみたいですね。映像作品ではなくて、演劇でもいいんですけど(笑)」

――監督の中で表現したいものを、どういったメディアに出すかを模索しているといった感じですか?

吉浦監督「やはりアニメは自分の中にノウハウがたまっているので、一番やりやすいんですけど、もしそれ以外の分野でも作らせてもらう機会があるならば、ぜひやらせてもらいたいなと思います」

――アニメにこだわっているわけではないんですね

吉浦監督「アニメの作品を実際に作ってみると、やはり表現の上で、"得手不得手"というものを感じるんですよ。実写の演技のほうが有利な部分ってあるじゃないですか。もちろん、アニメのほうが有利な部分もあるのですが、それを感じたがゆえに、逆に実写にも興味が出てきたというところもあります。やはり、人間の細かい演技は実写のほうが強いと思います」

――アニメーションの限界ってありますよね

吉浦監督「やはり感情に訴える部分は、いろいろな演技や演出を付加していかないと表現しきれないんですよ。でも逆にそれが強みでもあって、実写だととてもできないような見せ方も、アニメなら平気でできたりしますし(笑)。だから、どちらが良い悪いという話ではなく、あくまでも"選択"のレベルだと思います」

――ちなみに今後もアニメの制作を進めた場合、フルCGでの制作というのは構想にありますか?

吉浦監督「日本でやる以上は環境的に難易度が上がるかもしれないですね。でもフル3Dでもうまいアニメーションをつける方もいらっしゃいますし、そういった方向性もあるかもしれません。手書きとCGのハイブリッドというのも面白いと思います。日本はどうしても手描きのほうにノウハウがたっぷりとあって、3DCGはまだ若干歴史が浅いということもあるかもしれませんので、すぐに作れるのはやはり"手描き"ということになりますが、フル3Dでの表現が合っている企画が立てられれば、それもアリだと思います」

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