深みが増した鮮やかな色合い

D90にも、D3、D300以降に導入されたニコンのカラーモード「ピクチャーコントロール」が搭載されている。モードは従来機種の「スタンダード」「ニュートラル」「ビビッド」「モノクローム」の4種類に、「ポートレート」と「風景」が追加された全6種類。ダイヤルを回して選択するシーンモードとピクチャーコントロールは連動しており、シーンモードの「ポートレート」と「風景」を選ぶと、それぞれピクチャーコントロールも「ポートレート」と「風景」に設定される。ただしピクチャーコントロールで微調整した設定は、シーンモートでは反映されない。

最近のニコンの色作りは、わかりやすいいい色になってきたと思う。標準の「スタンダード」でも充分鮮やかな印象を受ける。ホワイトバランスとも関係するのだろうが、D80では青が強く尖った印象だったが、D90では赤みが増し、全体でも色に深みが出たと思う。充分に鮮やかなので、色浮きしやすい場合は「ニュートラル」を選択するか、微調整でコントラストを下げたほうがいいかもしれない。「ビビッド」は鮮やかすぎで、晴れた日や彩度の高い人工物を撮影すると色がノッペリと塗りつぶしたようになってしまう。以前はヌケの悪い風景撮影で「ビビッド」を使うこともあったが、D90で風景の色を出したい場合は、新たに追加された「風景」を使った方が自然な鮮やかさになると思う。しかし「風景」も、「ビビッド」ほどではないが、不自然な印象を与えてしまうくらい鮮やかなので、通常の風景撮影は「スタンダード」を使ったほうがいい。人物撮影の場合、「ポートレート」はとてもいい。とくに蛍光灯下で人物を撮影するときに有効で、「スタンダード」や「ニュートラル」で撮影すると肌が青白くなってしまうが、「ポートレート」では蛍光灯でも健康的なピンク色の肌に再現された。

もちろんカラーモードごとに、各パラメーターをまとめて調整する「クイック設定」や、輪郭強調、コントラスト、明るさ、色の濃さ(彩度)、色合い(色相)が調整できる。しかし、アクティブD-ライティングとカラーモードの関係は密接しているので、アクティブD-ライティングを設定していると、コントラストと明るさは設定することはできない。カラーモードの微調整をすることきは、アクティブD-ライティングの設定も含めて考えたほうがいいだろう。

ピクチャーコントロールは新たに「ポートレート」と「風景」が追加された

ピクチャーコントロールの微調整。アクティブD-ライティングを設定すると、「コントラスト」と「明るさ」は設定できない

モノクロームのメニューはほかと違い、フィルター効果や調色が設定できる

ピクチャーコントロールの変化を見る。左から「スタンダード」、「ニュートラル」、「ビビッド」
DX18-105mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 30mm(45mm相当) / マニュアル / ISO 200 / WB:オート]

同上。左から「モノクローム」、「ポートレート」、「風景」

空の色の変化を見る。左から「スタンダード」、「ニュートラル」、「ビビッド」
DX18-105mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 38mm(57mm相当) / プログラムAE(F11、1/500秒) / ISO 200 / WB:オート]

人工物の色を見る。左から「スタンダード」、「ニュートラル」、「ビビッド」
DX18-105mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 35mm(53mm相当) / プログラムAE(F8、1/250秒) / ISO 200 / WB:オート]

「より強め」が追加されたアクティブD-ライティング

「アクティブD-ライティング」は輝度差が激しい被写体を撮影するときに、白飛びや黒つぶれを抑える機能。D80では撮影後の補正機能だったが、撮影時でも効果を得ることができるようになった。また従来機種には、「しない」「弱め」「標準」「強め」「オート」の5項目だったが、「強め」より効果が高い「より強め」が追加された。

アクティブD-ライティングは、白飛びを抑えるより、明るい部分に露出をあわせ暗い部分を持ち上げている効果のほうが強いようだ。ただ、暗い部分を明るくし過ぎるとのっぺりしたメリハリのない絵になってしまうこともあり、従来は「強め」でも効果はあまり強くなかった。D90の「より強め」という項目を増やしたことは正解だと思う。見えなかった部分が現れてくるので、夜間撮影なども面白い効果が出る。通常撮影ならば「オート」にしておけば問題ないはずだ。

アクティブD-ライティングは効果の強い「より強め」が追加された

これは画像編集メニューの「D-ライティング」。撮影にも補正できる

補正幅は撮影時のアクティブD-ライティングよりも強めのようだ

アクティブD-ライティングを変えて噴水を撮影した。左から「オート」、「より強め」、「強め」
DX 18-105mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 34mm(51mm相当) / マニュアル(F8、1/250秒) / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード]

同上。左から「標準」、「弱め」、「しない」

ミックス光でも見た目通りの色になる

ホワイトバランスは、色作りにも影響を与える大切な要素だ。D90のホワイトバランスは、より自然な印象を与える性能になっている。「オート」で撮影した場合、太陽光と蛍光灯など複数の光源下での撮影は、ひとつの光源に引っ張られることがすくなくトータルバランスがよくなった。最近のカメラはほとんど「オート」で撮影すれば問題はない。しかし、ミックス光など難しい光源下ではプリセットでマニュアル設定しなくてはいけなかったのに、D90はそんな状況でもかなりいいと思う。

ホワイトバランスはプリセット設定が5つまで登録できるようになった

ホワイトバランス微調整はマルチセレクターで2次元的に設定できる

晴天日陰でホワイトバランスの変化を見た
DX18-105mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 105mm(158mm相当) / プログラムAE(F5.6、1/80秒) / ISO 200 / PC:スタンダード]

彩度の高い被写体を撮影し、色の張りつきを見た
DX18-105mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 48mm(72mm相当) / マニュアル(F10、1/60秒) / ISO 200 / WB:マニュアル]

左の被写体の赤い部分のヒストグラムをまとめたもの。モードによって色のバランスがずいぶん変化しているのがわかる

ピクチャーコントロールのグリッド表示。コントラストと彩度の関係が分かりやすい