漫画やアニメ、特撮ドラマに登場するSFメカを自分自身の手で操ってみたいとお思いになったことはないだろうか。今回は、そのような試みを実際に行っているアクアモデラーズ・ミーティングの方々を訪ねた。水中を舞うSFメカの動画も交えてレポートする。

今回訪ねたのは、神奈川県横須賀市にある海洋研究開発機構

会場となった同機構内の施設の1つ、潜水訓練プール。タテ21m、ヨコ21m、最大深度3.3m

ダイバーの方。故障した模型のレスキューのため、常時待機している

まずは、STARFLEET YDDさんにお話をうかがった。

STARFLEET YDDさん

――今日お持ちになったものを教えていただけますか?

「映画『スター・トレック』シリーズに登場するU.S.S.エンタープライズA型艦、テレビドラマ『スター・トレック ヴォイジャー』に登場するU.S.S. ヴォイジャー、それに、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』に登場する宇宙戦艦ヤマトです」

U.S.S.エンタープライズA

STARFLEET YDDさんとエンタープライズ。写真を見てもお分かりのとおり、かなりの大型キット

U.S.S. ヴォイジャー

宇宙戦艦ヤマト

――これらをお作りになるにあたって、ベースになったものがあるわけですか?

「はい。エンタープライズは、アメリカのポーラライツ社製1/350プラモデルENTERPRISE 1701-Aをベースにしています。同じく、ヴォイジャーはモノグラム社製1/667 U.S.S.VOYAGERです」

――内部には、どのような物が入っているんでしょう?

「まず、推進力を発生させるためのバスポンプ。次に、ラジコン関係のメカ。受信機、アンプ、サーボ、バッテリーといった物ですね。そして、浮力材です」

第1船体(円盤部)のフタを取り外したところ。中央にあるのが防水されたバッテリー。電飾用の電気コードが見える。グレーの塊は浮力材

船体をひっくり返して第2船体の中を見ると、こうなっている。中央の黄色い物がバスポンプ。お風呂の残り湯を洗濯機に移したりするアレだ。これなら防水もバッチリ

――バスポンプから吐き出される水流の出口は、どこにありますか?

「第2船体尾部のシャトルベイのドッキングポートの部分です」

――進行方向は、どのようにしてコントロールしますか?

「水流の噴射ノズルの向きを上下・左右に変えられるようにしています」

――ヴォイジャーを作るうえで難しかった点は、どこですか?

「円盤部が、かなりスラントノーズになっていて、押し下げようとする力を生み出します。つまり前に進むにしたがって潜っていくクセがあるんですよ。そこで、前部の浮力を多めにとって、互いに相殺するようにしています」

第2船体尾部の噴射ノズル。この向きを上下・左右に変えることによって、進行方向を変える

ヴォイジャーを真横から見たところ。画面左が進行方向。スラントノーズになっているのが分かる

――飛行機のラジコンを流用すると、チャンネルは4つありますね。そのうちの2つをノズルの上下と左右のコントロールに、残りは電飾のコントロールに使ってらっしゃるわけですか?

「ヴォイジャーだけは姿勢制御に3ch使っています。というのも、船体の構造上、噴射ノズルを上下に振ることができないので、円盤部の前部左右にそれぞれウイングをつけ、それで上下方向のコントロールをしています」

――左右にそれぞれ1chずつ割り当てているわけですね。そのメリットは、どこにありますか?

「左右独立に動かせるようになったことで、ロール、すなわち、きりもみ航行ができるようになりました」

――劇中では、エンタープライズ号は、スラスターで方向を変えたりするときは、ゆっくりとした動きですね。

「ゆっくり走らせることができるというのが、水中のおもしろさですね。静止もできるし、地上ではあり得ないような動き。宇宙空間でのそれに等しいような動きをさせられるというところが、一番の魅力ですね」

動画
水中をゆっくりと進むエンタープライズ。魚雷発射口が赤く光るのは、内部にレーザー発振器を備えているため。映像は、いずれも、アクアモデラーズ・ミーティング著作・制作によるDVDから
よく見ると、ヴォイジャーの艦首に透明なウイングがついているのが分かる。後ろを追跡しているのは、ボーグキューブ。劇中のシーンの再現だ