ここからは、実際にテイスティングをするにあたってのコツを紹介していく。このコツを知らないと、細かな味の差が把握できなかったり、感想をうまく言葉で表現できなかったりもする。ここからは、東京・溜池山王の「ANAインターコンチネンタルホテル東京」内にある「シャンパン・バー」のチーフを務める浅井智美氏に教えていただいたポイントを盛り込みつつ、テイスティング法を解説していく。

「ANAインターコンチネンタルホテル東京」内にある「シャンパン・バー」。シャンパンはグラスで10種類以上用意するといった豊富なラインアップになっている。セミオープンの店舗デザインで、入りやすい雰囲気

テイスティングで大切なのは、「原材料を意識する」という点。シャンパンの原材料にはブドウ、酵母、そして瓶内発酵のために加えられるリキュールが挙げられる。味に大きな影響を及ぼすブドウについては、品種やブレンド割合、産地、つくり手、ヴィンテージなどを把握しておくと味を覚えるのに役立ち、銘柄も選びやすくなる。

そしてもう1点。テイスティングでは実際に口に含んだ瞬間だけでなく、そこに至るまでの段階にも注意を払うことが重要なのだ。コルク栓を抜くところからテイスティングが始まっていると考えてよい。次のように、五感をフルに使ってシャンパンの状態を感じ取れば、より理解は深まる。

  1. 聴覚:抜栓するときの音を聞く。上手なソムリエは音を立てずに抜くが、健康なシャンパンはガスが強く、コルクを緩めてガス抜きをしているはずだ。
  2. 触覚:ボトルやシャンパングラスに触れ、温度を確かめる。低い温度だと華やかな香りが目立ち、高い温度だとしっかりとした味わいが感じられる。
  3. 視覚:色、濁り、泡の状態を確かめる。ノンフィルターのシャンパンもあるので、透度が高ければ品質が高いというわけではない。また、比較テイスティングの時は視覚による判断が重要な位置を占める。
  4. 嗅覚:揮発性の成分を嗅ぎ分ける。一般的に華やかな香り(エステル香など)と言われているが、コルク臭などを感じることもある。
  5. 味覚:舌は先端と付け根で感じ取れる味の種類が異なる。また、歯茎も味を感じ取ると言われている。口中で満遍なくシャンパンを味わえるように心がけながら口に含む。