"はやぶさ"から"はやぶさ2"、そしてMk2へ向けて

JAXA 月・惑星探査プログラムグループの吉川真准教授

川口氏のはやぶさにかける熱い想いが語られた後ははやぶさ2について、吉川氏からその概要が語られた。

吉川(以下、敬称略):はやぶさ2の前にはやぶさを振り返ると、そもそもはやぶさのアイデアは1985年、大学院のマスターコースの時、小惑星の軌道計算を始めたころに出てきたものでして、それがようやく今年実現したということで、実に25年経っています。

はやぶさの成果を一言でいうと、地球接近小惑星がクレータに覆われたボコボコなものではないということが最大の発見であると思っています。仮にイトカワを半分に切ってみると、一度、バラバラに別れた天体が衝突、合体してできた、つまり中に空洞があるのではないかということがはやぶさの探査によって分かりました。

当然、この後、サンプルが分析できれば、さらに新しいことが分かってくるということで、あのような直径500m程度の小さな小惑星に行ってもしょうがないということが他の宇宙機関にあったのかもしれませんが、日本が初めて行ったことで、まさに米国も欧州も似たようなミッションをやりたいと言い出し始めたくらいですから、本当に日本が最初にこういう天体に行くというスタートを切ったのは良かったと思っています。

イトカワですが、いつも講演の際に1/2000モデルの模型を持ち歩いているんですが、実は2種類あります。どうして2種類あるかというと、1つははやぶさのデータをすべて使って、イトカワの形を形成しています。もう1つははやぶさのタッチダウンする直前に急いで形を作ったもので、この形をもとにタッチダウンを行う場所などを決めたモデルです。

イトカワの1/2000モデルを持って説明する吉川氏

左がはやぶさのデータを元にして作られたイトカワの1/2000モデル、右がイトカワに着陸する前に作られたモデル。左のイトカワに乗っているのは、同じく1/2000のはやぶさ

小惑星は非常に多く存在しています。そのため、イトカワだけを調べても全然、太陽系全体の小惑星を知ったことになりません。ですので、我々としてはシリーズ的な探査をしていきたいと考えています。まず"はやぶさ"、"はやぶさ2"と来て、そして"はやぶさMk2"と考えています。

はやぶさ2ははやぶさと大きさがほぼ同じで、はやぶさをベースとして、別の天体にいく計画です。Mk2はモデルチェンジをして、かなり大型の探査機として、より遠くの天体から物質をとってくる。

専門的に言うと、イトカワはS型で、はやぶさ2はC型と呼ばれる、割と有機物や鉱物の中に水が含まれている天体に行きたいと考えています。そして、Mk2ではD型の天体、D型はまだ物質がよくわかっていない天体です。S型とC型の隕石は地球によく落ちてきており大概のことは予想がつくのですが、D型はほとんど隕石が落ちてきていないので、未知の物質であり、将来的には、そうしたより遠方からのサンプルリターンを狙いたいと考えています。

S型、C型、D型について、それぞれ調べていくことが太陽系を調べていく上で重要になります。M型という天体もありますが、これは鉄が表面にある惑星。一度惑星になって、中心にコアができて、それが隕石などの衝突によって表面に出てきたものではないかと考えられており、これも面白い天体だと思っていますが、今のところ、より始原的な、太陽系の初期の物質に迫る方針で、S型、C型、D型と調べていくことが考えられています。

はやぶさ2はC型天体に行って、タッチダウンをして表面の物質を採取します。採取方法は弾丸方式を考えていますが、それ以外も考えています。その後、新たな試みとして、人工的なクレータを作って、表面ではなく、内部の成分も持ち帰ることを計画しています。衝突装置を搭載して、小惑星上空で切り離して、はやぶさ2は天体の影に隠れて、装置を爆発させる。そうすることで、直径数m程度のクレータが形成されます。そこには、地下から出てきた物質があるので、それを採取したいと思っています。

C型は有機物が多いといわれていますので、表面だけでは有機物が変質している可能性がある。少しでも地下の物質を取ることで、変質していない物質を採取して地球に戻って調べようということです。

対象天体は1999 JU3で地上観測はほぼ終了しています。こういった天体から物質を採取してくることで、太陽系が生まれたころや生まれる前に、どういった鉱物があったのか、水がどういう状態だったのか、そういったことが調べられる科学的にも野心的なミッションになっています。

こうした小惑星探査の意義としては、科学としての生命の起源などが大きなテーマとなりますが、このほか、小惑星の地球への衝突をどう考えるかという「スペースガード」としてのデータを集めたり、今現在はコストに見合いませんが鉄衛星などを資源として活用する可能性を探る、米国で動き始めていますが、月よりも遠くて、火星よりも近い天体に有人で行くといったミッションもターゲットになってきています。そういった意味では、小惑星探査には色々と意義があります。

はやぶさはランデブーとサンプルリターンを達成しました。はやぶさ2ではさらに衝突実験を行います。せっかく日本がはやぶさで世界に先駆けたので、ぜひ続けて日本がリードしていきたいと考えており、先端のことに挑戦していくことで、それを実現していければ、1番を狙えるのではないがと思っていますので、応援してもらえればと思います。

世界の太陽系小惑星探査