何はともかく世界一にならなければいけない

何よりも世界一でなくてはといけないと思います。米国での報道では、はやぶさは世界で2番目に惑星から帰還した探査機になっています。もちろん1番目は「スターダスト(NASA)」です。

はやぶさのカプセルは世界で2番目に速い速度で再突入したとも言っています。やはり1番はスターダスト(NASA)だと言っています。はやぶさが地球圏外の天体に離着陸して帰還した世界初の探査機などということは、報道されないんですね。

ようするに米国は、自国の国民にこの国は「No1」の国であるという、自信と心を持たせる政策を徹底しているわけです。

片や日本はというと、どうして世界一でなくてはならないんだ、どうして2番目では駄目なのか、ということで、この間の事業仕分けでは(はやぶさ2)は予算を削られ、ほぼゼロになってしまいまして、まったく違う文化だというように思っていまして、ぜひ、ここは直していただきたいと思っています。

ただ、色々とはやぶさでは成果を出し、さまざまな教訓も得て、技術よりも根性という言葉もでました。それも運を実力に変える先端技術の達成があったこと、これは強調しておきたいですね。はやぶさが帰ってこれたのは実力かと聞かれると、"正直なところ幸運です"と答えます。ですから、今は幸運で良いと思います。幸運でできたことは恥ずかしいことではありません。しかし、この幸運を実力に変えることが次のチャンスなんですね。これで本物になると思っています。

未来に自信と希望を与える科学技術の発揮、これも重要でしょう。新たな成果を実現するためには、水平線の向こうを見ないといけない。こうした成果は、いきなりはできません。はやぶさも先達の成果があって、できたことなんですね。

今の我々に重要なことは、果たして先達が築いて、我々に託してこられた蓄積を、次の世代にうまく継げていけるか、そういう尺度に答えられるように努力していく必要があると思っています。

そこで「はやぶさの後継機」ですが、はやぶさプロジェクトはスタートして15年目を迎えます。関わってきた人もみんな15年の月日を経ています。このまま行くと、知識も技術も若い人に伝承できないことになりかねないと危険があります。はやぶさの母船は燃えて消えてしまいましたけど、はやぶさの後継機ではぜひ、地球をスイングバイさせて、確約はできないんですが、宇宙航行、太陽系航行の航路を確立するためには不可欠な技術として、太陽-地球系ラグランジュ点へ係留する技術を実現したいと思っています。

それにより何時の日か、ラグランジュ点ではやぶさの2号が将来の後継者に発見されて、それが回収されるように努力していきたいと思っています。

宇宙に関するプロジェクトは、開始から終了まで非常に長い年月がかかるのがほとんど。そのため、いかに若手に知識や技術を継承していくかが将来的に先端を行くためのポイントとなってくる