世界初のヒューマノイド「WABOT-1」からロボット開発に携わる

そして水川氏は、早稲田大学3年の時に故・加藤一郎教授のゼミに入り、世界初の本格的な知能を持ったヒューマノイドロボット「WABOT-1」の開発チームに参加。その後も大学院に進んで、引き続き加藤研究室でロボットの力制御の問題に取り組み、実質的には世界で最初に式を立てて解いたと言う。

"WABOT-1"は、1972年~73年にかけて完成・発表。水川氏は油圧で動くアームを備えた上体部分「WAM-4」の製作やプログラミングを担当したそうだ。アルミフレームで構成されたハードウェアは、すべて学生の手作りで、ハンド部分の設計と製作は、ソニーのデジタルクリーチャーズラボラトリーで小型ヒューマノイドロボット「QRIO」の開発に携わった石田健蔵氏が担当していたと言う。

また、2足歩行する足の部分「WL-5」は、手塚治虫の「三つ目がとおる」に登場、写楽保助が小さなバージョンを作って遊んでいる場面が描かれていたとか。

早大加藤研究室で開発された世界初のヒューマノイドロボット「WABOT-1」。右側が大学4年当時の水川氏

"WABOT-1"の上体部分「WAM-4」は、水川氏がプログラミングを担当して動かし、コップの中身をへ移し変えることもできた

続けて、水川氏は関わっていないが1984年に加藤研究室で開発された鍵盤楽器演奏ロボット「WABOT-2」も紹介。翌年開催の「国際科学技術博覧会(EXPO'85 つくば科学万博)」に登場した機能強化版「WASUBOT」はご存知の方も多いだろう。現在、早大創造理工学部 総合機械工学科の教授で、人間共存型の生活支援ロボット「TWENDY-ONE」も開発した菅野重樹氏がワイヤ駆動のアーム系を開発したと言う。

鍵盤楽器を演奏するヒューマノイドロボット「WABOT-2」

「これがすごいのは、単にプログラム通りに指を動かすのでなく、カメラで楽譜を見て、そこに描かれた抽象的な情報を具体的な指の動きへ展開するという、非常に高度な計画問題をプログラムで解いたこと。人間型をしていると、人間にできることはロボットにもできるだろうと考えてしまいがちだが、実際は人間が簡単にやっていることほど難しい。我々が無意識にしている行動をどう生成するか、それを解釈してモデルを作り、実世界で動かして研究する。記号で分かることと物を作って分かることには大きな違いがあって、それを一体化して初めて我々自身のことも分かってくる。そういう意味でロボットを研究している人もたくさんいる」