ロボカップサッカーの中でも最も広いフィールドを使用するのが中型リーグ。今年はさらに一回り大きくなり、ついに18×12mと、ほとんどバレーボールのコートと同じくらいの広さになってしまった。
初日から決勝戦
最初に試合を見たときに、「動きが昨年よりも遅いような……」と思ったのだが、これはフィールドが広くなったせいだろう。ただ、広がったことにより、マシンに搭載されている全方位カメラでは遠くのほうまで見えなくなってしまったということで(あるチームに聞いたところでは、8~9mくらいまでは問題ないが、それ以上だと精度が悪くなるという)、各チームともその対応には苦労していた。動きが悪く感じたのは、このせいもあるかもしれない。
中型リーグには7チームが参加しており、いつもどおり、総当たりの結果で順位が争われた。筆者が注目していたのは、昨年度の優勝チームである「Hibikino-Musashi」(九州工業大学、北九州市立大学、北九州産業学術推進機構)と、2年前の世界チャンピオン「EIGEN」(慶應義塾大学)。初日には、いきなりこの両者が対戦した。
しかし、まだ初日ということもあってか、両チームとも本調子ではない様子。試合としては盛り上がりに欠ける展開だったが、EIGENが2-0で勝利した。結局この試合の勝敗が優勝を左右することになり、EIGENが6戦全勝、しかも無失点というパーフェクトな内容で優勝を決定。Hibikino-Musashiは5勝1敗で2位、失点はEIGEN戦の2点のみで、「2強」を印象付ける結果となった。
明暗を分けたルール変更
前述のように、フィールドが広くなったことで難易度が上がった今回の大会。「The Orient」(東洋大学)は、IEEE1394接続の全方位カメラに加え、USB接続の前方カメラを搭載することで対応しようとしたが、この画像の取得がうまくいかず、1勝しかできないという不本意な結果に終わってしまった。
Hibikino-Musashiは、各マシン間の通信で見えないエリアをカバーするようにしていた。フィールド中にマシンは散らばっているわけで、見えている情報をうまく共有するという仕組みだ。ちなみにこのチームは昨年も強力なシュートを持っていたが、今年はバネの本数を2本から3本に増やしており、威力がさらに増したそうだ。
対するEIGENはというと、もともと前方カメラも装備していたためか、フィールドの広さはそれほど苦にならなかった模様。メンバーも「ドリブルやフォーメーションの自由度が上がる」と話しており、このルール変更をうまく味方に付けた感じだ。ちなみにマシン内部には、相変わらずレッツノートが搭載されていた。
また、「Soromons」(福井大学)と「Trackies」(大阪大学)は、今年は合同チームで参加。Soromonsのマシンがディフェンス、Trackiesがオフェンスを担当しており、4位と健闘した。ちなみにSoromonsの機体は、今年も全方位カメラを3基搭載していた。扱いは難しいが、人間と同じように視差で距離を判別できるので、うまく機能すればもっと広いフィールドでも対応できるようになるかもしれない。