さて、こうなってくると災難なのはTeam OSAKAである。準決勝の相手はDarmstadt、決勝の相手はCIT Brainsと、どちらもはじめロボット。気が抜けない試合が続くが、じつは今年のTeam OSAKAは、戦う前から過去にないほどの大ピンチに見舞われていたのだ。
Team OSAKA絶体絶命?
異変は大会前夜に起こった。今年の機体はVisiONの4世代目となる「VisiON 4G」なのだが、メイン制御用に搭載しているピノー製のCPUボードが突如として動かなくなったということで(しかも複数で同時多発的に発生したという)、パドックでは必死の修復作業が続いていた。
幸い、2on2は予選が2日目、決勝トーナメントは最終日の3日目に行われたので、なんとかボードの修理も間に合い、決勝戦前には「トラブルがないわけではないが、なんとか動くようになった」(Team OSAKA・高橋智隆氏)という。一時は連覇に黄信号が灯ったTeam OSAKAだが、ギリギリで戦う準備は整った。
ちなみに新型機の大きな特徴は、従来の全方位カメラに加えて、顔の前にも足元を見るためのカメラを追加したことだ。これまでのVisiONは、ボール付近に移動したあとに、前屈みになって足元を確認、そして再び位置あわせのために移動してと、ボールを蹴る前にこれを何度も繰り返していた。昨年までは、速い相手もほとんどいなかったので問題になることはなかったが、いずれこれが弱点になるのではと筆者も思っていた。
今回新たに追加したカメラはこの弱点をなくすもので、VisiON 4Gはボール付近に行ったときに、以前のような前屈みはせずに、いきなりシュートを放っていた。速い機体対策として、「今は"精度"よりも"早く打つ"ほうにバランスを振っている」(Team OSAKA・大和信夫監督)ということもあるようだが、そのほか歩行速度も30%向上しており、全体的に機敏になった印象を受けた。
まずはDarmstadt、リベンジなるか?
そういうわけで、準決勝の相手はDarmstadtである。昨年のジャパンオープンでは2-0の僅差でTeam OSAKAが勝利しているが、コンピュータのみ代えたDarmstadtに対し(機体はほぼそのまま)、全くの新型機で臨むTeam OSAKA。VisiON 4Gの実力を占う上でも、結果がどうなるか見ものである。
試合は、Team OSAKAが順調に得点を重ね、終わってみれば9-4という派手なスコアで勝利。終盤、Team OSAKAは決勝戦に備えて1体を温存しており(このあたり、まだ機体が万全でないことがわかる)、その間に追い上げられたという面があるので、実際はスコア以上にTeam OSAKAの圧勝だったことは付け加えておきたい。
ところで、Darmstadt側はたまに2体で攻めているように見えるときがあったのだが、これは状況に応じて役割をチェンジしているためだという。チームのスタッフに聞いたところ、無線LANで通信しており、「1体が前に行ったらもう1体は下がる」ことになっているそうだ。2体で同時に前線に出ているのは、その切り替わりの瞬間らしい。
VisiON対はじめロボット、第2ラウンド
決勝戦は、Team OSAKA対CIT Brains。またもやはじめロボットである。準決勝のもう一試合はCIT Brains対「Jeap」(JST ERATO 浅田プロジェクト、大阪大学)だったのだが、力の差は歴然で(Jeapは予選で無得点だったが、得失点差で決勝進出)、6-0で予想通りCIT Brainsが勝ち上がってきた。
決勝戦前の両チーム。どちらも準備に大忙しだった |
決勝戦については、試合の動画を全部掲載してしまおう。ちょっとファイルサイズが大きいが、前後半に分けてあるので、以下をご覧いただきたい。
先制点を奪うなどTeam OSAKAを苦しめたCIT Brainsだったが、結果は6-4でTeam OSAKAが連覇を達成。直線的な移動はCIT Brainsのほうが確かに速かったが、Team OSAKAはボールに回り込む動きが秀逸で、うまく次の攻撃や防御に結びつけていた。Team OSAKA側は全方位カメラも搭載しているせいか、ボールのロストも少なかったように感じた。
ちなみにCIT Brainsは今年が初参加だが、じつはこれまでToin Albatross(桐蔭横浜大学:小型リーグ)とToin Phoenix(同:ヒューマノイドリーグ)としてロボカップに参加していたメンバーで構成されているとか。チーム代表の林原靖男氏(千葉工業大学助教授)もそんな一人だが、小型リーグでの経験を活かして「29種類の戦略(パラメータ)を持ってきた」という。
これを相手によって切り替えるわけで、決勝戦ではフォワードが「ツボに入れば強い戦略」、キーパーは「安定した戦略」になっていたそうだ。終盤、2体ともフォワードにするという捨て身の作戦も実らず、惜しくもTeam OSAKAには敗れてしまったが、7月に開催される世界大会(アトランタ)での再戦もぜひ期待したいところだ。