ヒューマノイドとは違い、足が付いてないのが小型リーグと中型リーグのロボット。しかしロボカップにおける歴史はこちらのほうが古く、多数対多数のダイナミックな試合を見ることができるので、"ゲーム"として楽しめるのはこちらかもしれない。ある意味、通好みといえるリーグである。

常勝RoboDragonsを止めるのは?

直径18cm×高さ15cm(最大)の機体によるスピーディな試合展開が楽しめるのが小型ロボットリーグ。昨年の大会では、"1-2-3"(パス-パス-シュート)などの精度の高い連係プレーを見せていた「RoboDragons」(愛知県立大学)が優勝しており、今年も危なげなく予選を勝ち進んでいたが、それに"待った"をかけたのが「KIKS」(豊田工業高等専門学校)。

RoboDragons対KIKSの一戦。今年のフィールドは、昨年よりも少し広くなったとか

このリーグでは、天井に付けられたカメラからの映像を元に、各ロボットに指令が出されている

もともと有力校ではあるのだが、今年は秒速8メートルという強烈なキック機構を搭載しており、破壊力は今大会ナンバーワン。しかもこの弾丸シュートに加え、相手の頭も越えるチップキックも装備しており、相手にとってみればタチが悪い。スローイン時に、大体は相手ロボットにコースをブロックされるものなのだが、そんなときにKIKSはうまくチップキックを活用していた。

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これが秒速8メートルの弾丸シュート。海外ではもっと速いものもあるとか
スローイン時に、チップキックで相手ロボットの頭上を越える

お互いに全勝・無失点で迎えた直接対決(予選は全6チームによる総当たり方式で行われており、これまでRoboDragonsは4勝28得点、KIKSは4勝16得点)では、後半に先制した1点を守りきって、RoboDragonsが1-0の緊迫したゲームを制した。

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うまく狙われて先制点。RoboDragonsのロングシュートが決まった

秘密は巨大コンデンサにあり

ところでこの両チーム、翌日の決勝戦で再び顔を合わせたのだが、KIKSチームに無線のトラブルがあり、6-0という一方的なスコアでRoboDragonsが勝利、連覇を達成した。どうも携帯電話から出るBluetoothの電波が通信を妨害していたらしく、ゴールをガラ空きにしてしまうなど、KIKSのマシンは明らかに動きがおかしかった。決勝戦らしい好ゲームを期待していただけに、ちょっと残念な結果になってしまった。

ちなみに、予選ではRoboDragonsも万全ではなく、いつもなら精度良く通るはずのパスが失敗するケースも目立っていた。これは、ヘタっていたキックデバイスのコンデンサを予選前日に交換したら、パワーが上がってタイミングが狂ってしまったのだとか。決勝までには修正したとのことだが、それでも予選を全勝してしまうのはさすがである。

RoboDragonsのマシン。車高を3mm高くしたほかは、ハードウェアは昨年とほとんど同じ

一方、KIKSのマシンは強力なシュートが武器ということは紹介したとおりだが、マシン内部を見せてもらったところ、キックデバイスのコンデンサの大きさにはビックリ。この電力を一気に開放してあのシュートを実現しているわけで、ソレノイドのコイルも学生の手巻きだとか。チャージに時間がかかりそうに見えるが、実際には2秒もかからないそうだ。

「でかっ」という感想のコンデンサ。表面には8200μFと書いてあった。ここまでくると感電がシャレにならないので、ゴム手袋を常備していた

CPUはSH-2を搭載。なんか見覚えのある基板だなぁと思っていたら、雑誌「Interface」の付録だった。おかげでかなり安くできたそうな