「X」になってしまったTwitter。変わったのは名前だけではなく、XはXであり、最近は「X(旧Twitter)」という注釈付きの表記が減りました。
1年前のゆく年くる年で、メディア、テクノロジー、金融など、Twitterを他にはない価値のあるSNSにしていた分野で離脱が加速すると予想しました。4月にマスク氏から「国営メディア」のレッテルを貼られたNPRが離脱したことで、メディアのTwitter離れが本格的に始まりました。予想外だったのは、そうしたユーザーだけではなく、ブランドへの影響という点から広告主の本格的なX離れも始まったことです。マスク氏はトラフィックとアクティブユーザーが今も多いことをアピールしてますが、それなのに広告主が大量離脱しているというのは、ユーザーが減少して広告を失うより問題の根が深いことを意味します。デス・スパイラル感が強まる一方です。
Xと対照的に信頼を取り戻したのがMetaでした。昨年の後半から今年の前半にかけて、米国経済はAppleの「App Tracking Transparency(ATT)」の影響を色濃く受け、「ATT不況」という言葉も造られました。最も手ひどいダメージを受けた企業がMetaであり、広告収入が減少し、株価も急落しました。
しかし、Xと違ってコアとなるユーザーはFacebookから離れておらず、Instagramのエンゲージメントも急落してはいません。さらに大規模リストラを実施して、将来に向けたビジョンにより集中する体制に絞り込み、短期間で成長の見通しを取り戻してします。
「Meta Connect 2023」(9月27〜28日)でMetaは、「Meta Quest 3」ではなく、AI統合を進めたスマートグラス「Ray-Ban| Meta smart glasses」を最後に発表しました。そしてCEOのマークザッカーバーグ氏は、メタバースと並んでAIを優先していく方針を示しました。
メタバースが伸び悩んでいるから生成AIに路線変更とからかう人もいますが、ビル・ゲイツ氏がそうであったように、変化の激しいテック産業の経営者には激流を柔軟に操舵できる修正力が求められます。今の「Ray-Ban| Meta」がスマートグラスとして成功できるかは分かりませんが、そこへの投資をMetaが強化することに納得できる基調講演でした。