「みやこの西北、ワセダのとなり」、そこにあるのはバカ田大学です。成績優秀者の就職先トップは「無職」(正しくは"自由人")、そして同大で最も有名な卒業生であるバカボンのパパの知能指数は12,500なのだ。
賢い人たちが集まっているシリコンバレーで、なぜアルトマン氏解任のようなドタバタ劇が起こってしまうのか。なぜイーロン・マスク氏は暴走するのか。それは、そこが「天才クソガキ」の集まるシリコンバレーだからです。
シリコンバレーは熱帯雨林に見立てられます。熱帯雨林では様々な要素が組み合わさり、思いがけない新しい動植物を生み出しながら生態系の進化を支えてきました。同様にイノベーションの生態系も単純な生物学的システムではなく、才能、アイデア、資本といった様々な栄養素が流れる環境であり、その栄養素の豊かな混じり合いから革新が生み出されてきました。しかし、そこで文化と常識の軋轢が生じます。
アルトマン氏の電撃解任は、理事会(OpenAIの研究成果を事業化する営利法人を監督)との対立でした。2019年に同氏はスタッフ向けのメールで、組織内の対立について、OpenAIには異なる部族(tribe)がいると表現しました。そこで「部族」という言葉を使ってしまうところがシリコンバレー的です。彼らはITの未来を築く賢い集団であると同時に、現代社会の常識、法やルールの枠に捉われない自由人であり、その点では部族なのです。
OpenAIは501(c)(3)で、そのミッションを「金銭的リターンを得る必要性にとらわれず、人類に利益をもたらす汎用人工知能(AGI)を構築することである」としています。
AGI開発を目標とし、闇落ちすることなく目標に突き進むために「金銭的リターンを追求しない」を部族のルールとしています。それが機能するように、営利活動する会社(OpenAI Global LLC)を、非営利組織(OpenAI Inc.)が支配するという二重構造組織になっているのです。
アルトマン氏の部族は、OpenAIをより伝統的なテック企業に近づけている部族です。アルトマン氏が解任された週末の技術系SNSでの議論では、理事会がこれほど巨大な価値をあっさり焼却してしまうことに対して「理解できない」という声が圧倒的でした。しかし、アルトマン氏が社員向けメールで書いていたように、理事会もまた「人類に貢献する安全なインテリジェンス」を価値観とする部族なのです。なので、ビジネスのルールを気にすることなく、従業員にも、最大のパートナーであるMicrosoftにも発表の直前まで知らせずにばっさり大ナタを振いました(結果、従業員とMicrosoftの怒りを買いました)。
解任騒動はアルトマン氏の復帰でひとまず落ち着きましたが、理事会が解任の決断に至るまでの詳細はまだ公開されていません(現在調査中)。理事会は刷新され、今は暫定的な体制ですが、適切な理由であったのなら、理事会はアルトマン氏を解任する権限を与えられています。理事会の権限の濫用だった可能性もありますが、実状はまだ明らかになっていません。
2つの部族の対立がこじれたとはいえ、OpenAIはAIの安全性を重視してきた組織であり、独自の二重構造を持つ組織であったから、逆風を避けて「天才クソガキ」が伸び伸びと活動できていました。新体制でも微妙なバランスを保つ信頼を構築できるのか。2024年の注目点の1つです。