◆消費電力測定(グラフ107~114)
最後に消費電力について。Sandra 2021のDhrystone/Whetstone(グラフ107)、CineBench All CPU(グラフ108)、CineBench Single CPU(グラフ109)、TMPGEnc Video Mastering Works 7(グラフ110)、3DMark FireStrike Demo(グラフ111)、Metro Exodus 2K(グラフ112)の6つを測定、それぞれの平均値をグラフ113、平均値とIdle状態の差をグラフ114にまとめてみた。全体を通してみると、やはりRyzen 7 5800Xの消費電力の高さが目立つ。その次にCore i5-12600Kが位置しているというのはまぁ予測できる範囲ではあるが、そりゃ消費電力がこれだけ大きければそうなるよな、という、ある意味納得できる数字である。
Ryzen 5 5600とRyzen 7 5700Xの消費電力がほぼ同等、というのもここから読み取れる。まぁ実際どちらもTDPは65W枠だから当然であり、そうなると65Wを8コアで分配するRyzen 7 5700Xより6コアで分配するRyzen 5 5600の方が動作周波数を上げやすく、それだけ性能が上がる、というのも理解できる。ならRyzen 7 5700Xは要らない子か? というとそんなこともなく、例えばグラフ108で言えばRyzen 7 5700XはRyzen 5 5600と同じ160W近い消費電力をピークで維持しているが、そのピークの時間が10秒ほどRyzen 5 5600より短い。要するにMulti-Thread性能が効果的なアプリケーションでは確実にRyzen 7 5700Xの方が性能が上だし、性能/消費電力比も良い。問題はそうしたアプリケーションはレンダリングとかエンコード、数値計算などに限られており、Office ApplicationとかゲームのシーンではまだSingle-Thread性能の方が大きな影響がある、というあたりかと思う。
考察と総評 - 既存モデルの値崩れ次第で難しい判断に
ということで駆け足でRyzen 5 5500/5600とRyzen 7 5700Xの3製品を試してみた。冒頭に書いた「Ryzen 7 5700XとRyzen 7 5800Xの性能差と消費電力差」、それと「Ryzen 5 5500/5600の価格性能比がどの程度か」を考えてみたい。
まずRyzen 7 5700Xについて。確かに消費電力は低くなっており、性能/消費電力比はRyzen 7 5800Xよりもかなり良好だと思う。ただし性能/価格比で言うと、これも冒頭に書いたようにRyzen 7 5800Xの値崩れが著しく、ほぼ同じ価格で購入できる事を考えるとやはりRyzen 7 5800Xの方がマシ、という結論になるのは避けられない。コア数が多い方が良く、かつ消費電力は押さえたいというニッチなニーズをお持ちの方には最適かと思うが、そうでなければ後述するRyzen 5 5600の方が良いという結論になる。
次にそのRyzen 5 5500/5600だが、やはりRyzen 5 5500はCezanneコアという事もあり、16MB L3が割と深刻に性能に影響を及ぼしている様に見える。確かに値段は安いが、それに見合った性能というべきか。一方意外にお買い得なのがRyzen 5 5600である。ゲームとかOffice Applicationでの性能も悪くない。勿論レンダリングとかエンコードの性能はRyzen 7には及ばないので、こうした事を多用するユーザーにはお勧めできないが、逆にあまりお金を掛けずにGaming Desktopを構築したいとかいうのであれば、価格的にも消費電力的にもRyzen 5 5600は非常にお勧めである。価格的、というのは今回のCore i5-12600Kと比較した場合、CPU単体で1万弱、メモリ(DDR4 vs DDR5)でこれも1万弱、しかも実はマザーボードの値段もだいぶ違う(H670マザーボードが大体2万5,000円前後、対してB550は1万5,000円前後)事を考えると、実質今回のテスト構成だと総額で3万違ってくる。勿論DDR4マザーボードと組み合わせれば価格差は大分減るが、その代わりCore i5-12600K側の性能は確実に落ちる。性能/価格比を考えれば、Ryzen 5 5600はかなり良い選択肢と言えるだろう。
問題があるとすれば、Ryzen 5 5500/5600はOC出来ない事。それと今年後半にはAM5プラットフォームが導入されるのに、今更AM4を買うか? という話であろう(これはRyzen 7 5700Xにも言えるが)。その意味では、これから新規にマシンを組むというユーザーは、とりあえず低価格でバランスの良いRyzen 5 5600をベースにするか、将来のアップグレードの余地があるCore i5-12600Kを(総額で3万余分に払って)購入するかという選択肢となる。どちらが良いか? というのはもう個人の好みとしか言いようがない。
一方Ryzen 7 5700Xは、既にAM4プラットフォームを所有するユーザー向けの、最後のアップグレード向けという感じになりそうだ。消費電力が65Wのままだから既存のプラットフォームでも無理は少ないし、OCをしないなら既存のCPUクーラーのままでも行けるだろう。AMD 300シリーズチップセットでの動作もサポートされたことだし、AM4を使いつくしたいユーザー向けと言う位置づけになるかと思う。先にも書いたが価格性能比ではRyzen 7 5800Xの方が良いと思う。ただしこちらは105WのTDPが、特にアップグレード向けではネックになりそうだ。ちなみに消費電力を問題にするならRyzen 7 5800X3Dの方がいいかもしれないが、こちらは更に価格が上がるあたりが問題だろうか。その意味では、価格と消費電力、性能のバランスが取れているのがRyzen 7 5700Xとなるだろう。