iPhone XRやiPhone 11は、同世代で見るとプロセッサーは同じだが、ディスプレイは低解像度で、OLEDではなく液晶を採用するなど、廉価版的な位置付けが強く見受けられた。しかしiPhone 12ではディスプレイは同等の解像度となり、全モデルでOLEDを採用するなど、表示面での差はなくなっている。
それでは、無印とProの違いは何かというと、主にカメラ部の違いとなる。iPhone 12が広角・超広角のデュアルカメラであるのに対し、Proシリーズは望遠・広角・超広角のトリプルカメラ+LiDARセンサーとなり、さらにPro Maxでは望遠時の倍率向上や広角カメラでの新型センサーおよびセンサーシフト式光学手ぶれ補正の採用など、カメラがさらに高度化している。
また、世界初となるDolby Vison対応HDRでの直接撮影機能も、Pro版のみ60fps対応となっている。Dolby Vision対応のHDR撮影は、まだ業務用カメラでも例のない機能ということで、Appleはかなり本気で映像業界のプロ市場を狙っていると思われる。
Apple独自のRAW形式「Apple ProRAW」で保存できるのもProシリーズだけだ(2020年末のアップデートで対応予定)。イメージセンサーだけでなく、LiDARセンサーやTrueDepthカメラからの深度情報などを利用し、Neural Engine、イメージプロセッサを通じて処理し、最終的な画像を生み出す「Computational Photography」(計算写真学)系の技術は、イメージセンサーのデータだけを記録したRAWデータとは相性が悪いとも言えるのだが、Apple ProRAWではこうした中間処理のパイプライン情報も付加して記録できるようにするということで、サードパーティ製アプリでもRAWデータを活用した処理を利用できるようになるようだ。こちらもAdobe CC系など、プロ市場を向いている機能の一つと言っていいだろう。
細かいところでは、ストレージの最小容量が64GBから128GBへと倍増している点が挙げられる。あえてProを選ぶような人が最小容量でよしとすることは少ないと思われるが、容量アップ自体は大いに歓迎したいところ。むしろ、できれば本体のストレージに1TB版がほしかったところだ。
これまで「Pro」と名前が付いていても単なる機能強化版という印象だったが、iPhone 12では本格的に特定の市場のプロをターゲットにしてきたと感じられる。もともと映像系に強いAppleだけに、その強みを最大限に生かすための方向性としては正しい選択だろう。