◆消費電力(グラフ76~80)
最後は消費電力比較である。今回はFireStrike Demoの他、F1 2020とMetro Exodus、Shadow of the Tomb Raiderのそれぞれの2Kでのベンチマーク中の消費電力を測定した。なおMetro ExodusとShadow of the Tomb Raiderでは、Ray Tracing(Metro Exodusでは更にDLSS)を有効にした場合と無効の場合でどの程度の差が出るか、も同時に確認してみた。
まず消費電力変動がグラフ76~79となる。GeForce RTX 3080は、GeForce RTX 2080 Tiと比較しても100W、GeForce RTX 2080 Superとだと150W弱、消費電力が増えている事が明白である。これはF1 2020(グラフ77)とかMetro Exodus(グラフ78)、Shadow of the Tomb Raider(グラフ79)などにも共通する話である。またRay Tracing、Metro Exodusだとあんまり増えていないというか、殆ど変わらない格好だが、Shadow of the Tomb Raiderでは明確にRay Tracing有効にすると消費電力も増えている。
それぞれの稼働中の平均値を取ったのがグラフ80となる。ちなみに「解像度が大きくなると消費電力も増える」と思われるかもしれないが、実際には解像度が大きくなっても小さくなっても、GPUはどうせ100%負荷なので変わらない。加えて言えば、解像度が小さいほどフレームレートが上がる分、CPUの負荷が増える=CPUの消費電力が増える、ということでむしろトータルの消費電力は上がる傾向にある。ラフに言えば、3Dゲームを遊ぶ場合、GeForce RTX 3080のシステムだと軽く500Wを超える。勿論これはCPUにRyzen 9 3900Xを組み合わせた場合の話なので、CPUのグレードを下げればもう少し下がるかもしれないが、400W前半台まで落ちるとは思えない。この消費電力の増加が、GeForce RTX 3080の最大のネックである。
実をいうと、今回のGeForce RTX 3080のベンチは、昼間はまともに実施できなかった。猛暑が続いたこともあり、エアコンがそれなりに稼働しているのだが、筆者宅は古いアパートで、おまけに電源容量(30A)ぎりぎり、ということもあって、エアコンの負荷変動が起きるとちょっと大きめの電圧降下があるためか、システムがリブートしてしまっていた。エアコンの負荷変動が小さい(=気温の下がった)深夜にはそうしたことが一切無かったあたり、GeForce RTX 3080を安定して使うためには、あくまで個別の事情だが、部屋の電源の安定供給度は確認しておくべきだった。多分筆者宅でこれを常用しようと思ったら、1000Wクラスの安定化機能付きUPSを噛まさないと難しいだろう。
さて、グラフ75~79はwatts up? proで測定した実効消費電力だが、watts up? proは1秒毎の積算消費電力の平均値をレポートするだけで、ピーク値はロギング出来ないので、瞬間的にどの程度まで消費電力が増えるのかは分からない。ただ昼間のシステムの落ちっぷりを見るに、相当電源に負荷が掛かる様に思う(ちなみに1000W電源を利用していてこの状況だ)。消費電力が100W以上増える事を鑑みても、電源と排熱処理はシビアに考える事になると思う。
考察
ということでGeForce RTX 3080の性能レポートをお届けした。何というか色々と化け物である。フレームレートがGeForce RTX 2080 Super比ですら5割以上も上がるから、そのフレームレートがどうしても欲しい、というユーザーには福音となる製品であろう。
NVIDIAは8K Playableと説明しているが、確かに軽めのゲームなら8K60fpsも十分に狙えるだろう。もっとも、ゲームプレイのためにそんなモニターを入れられる場所を確保しているユーザーが、現時点でどの程度「日本に」居るのかは良くわからないが。
この凄まじい性能の代償はコストと消費電力である。とくに電源にはかなり厳しい。筆者宅の電源事情だと安定運用は冬になるまで無理だろう(*1)。また消費電力が100W以上増えていれば、当然発熱も相応に増えるはずで、バラ組運用でテストを行っている筆者の環境はともかく、ケースに入れて常用するならケース内温度はかなり上がると思われる。ケースの排熱能力を一段高めないといけないだろう。というシーンも多そうだ。導入する前に、まずはこうした環境が整えられるかをよく確認したうえで、そこで目途が立ちそうな人だけ、資金調達に走るというのが良いかと思う。
とりあえず筆者的には、この後に控えるGeForce RTX 3070に期待したい。こちらは消費電力が100W下がるからだ。
(*1) ガスストーブが併用できるので、冬は消費電力的にかなり楽になる。